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 そのほか、コンドームを含めたアダルト用品の購買者は、大卒以上の学歴を持つ既婚男性が多くを占めたという結果もある。中国における性の悦びとは、金持ちやインテリにこそ許される娯楽とも言えるのだ。中国では貧困層を中心に一生結婚できない男性が3000万人以上おり、夜の世界も格差社会である。

 別の調査も紹介しよう。13年に中国性学会が2.1万人以上のネットユーザーの回答を得て発表した『全国網民性福調査』でも、全回答者の「週1回以上」率は70%だった。調査対象者の81%が18〜35歳の若者世代であることも関係しているとはいえ、こちらも驚異の高率だ。

 同調査では、自身の性生活に満足している人は57%。パートナーをエクスタシーに導いて満足させる義務があると回答した男性は94%に達した(ただし、それができていると自任する男性はわずか25%。いっぽう「達したフリ」をした経験を持つ女性は65%もいたそうだが)。

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 ともかく、わずか13年前には性的満足度が世界ワースト1位だった中国のセックス事情は、1980年代生まれ以後の新世代が社会の中心となるにつれて大幅にアクティブに変わっている。いまや、本来の用途はフードデリバリーアプリである『美団』を通じて、部屋へのアダルト用品の即時出前がスマホの操作ひとつでできてしまうような時代なのだ。

 中国は往年の一人っ子政策の影響もあり、世代別人口がいびつだ。あと10年もすれば60歳以上の世代が3億人を突破する「人口の時限爆弾」の破裂を迎え、経済停滞の可能性も囁かれている。

 しかしながら、「週1回以上」が50〜70%に達するという元気な若者のセックス事情を見ていると、セックスレス大国の日本と比べれば、中国はまだ何とかなりそうな気もしないではない。

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安田 峰俊

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