どんなマスクを使っても感染を防御することは困難
冬場になると多くの日本人が装着する「マスク」はどうでしょうか。これまで、インフルエンザの感染予防効果を検証する研究が国内外で複数行われていますが、どの研究でも、マスクの装着の有無によって予防効果に差はなかったそうです(ヨシダ製薬Y’s Square 感染対策情報レター「日常的なマスク着用による感染予防効果について」Y’s Letter Vol.4.No.8 Published online:2018.04.17)。
結核やSARS(重症急性呼吸器症候群)の感染予防に使われる「N95」という高性能マスクと一般的な医療用マスク(サージカルマスク)を比較したカナダの研究でも、それぞれの着用者間でインフルエンザ感染率に差がなかったそうですから、どんなマスクを使っても感染を防御することは困難だと言わざるを得ないでしょう。
だからといって、マスクをつけるのが無駄だというつもりはありません。感染は予防できなかったとしても、電車の中などで咳をしてウイルスのついた飛沫をまき散らすのは、他の人の迷惑になるからです。それに、マスクと手洗いを併用すれば、感染をある程度防げるという研究もあります。
かえってストレスを溜める可能性も
さらに、インフルエンザウイルスはアルコールや次亜塩素酸ナトリウムなどに弱いので、外から帰ったときに市販のエタノールなどを含む除菌スプレーで手を消毒したり、ウイルスがつきやすいドアノブや冷蔵庫の取っ手などにスプレーを吹きかけておけば、より効果的かもしれません。
とはいえ、まさか電車のつり革やお店のトイレの個室の取っ手まで毎回消毒するわけにいきませんから、インフルエンザ流行中に外に出れば、完全にウイルスから逃れるのは困難でしょう。それよりも、インフルエンザの感染を恐れるあまり、過度に清潔に神経質になりすぎるのは、かえってストレスになって心身の健康によくないような気がします。