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インフルエンザの人が出勤するほうが「迷惑」

 このように、ふだん健康な人がインフルエンザで医療機関に行っても、あまりいいことはないのです。数日たっても高熱が下がらない、呼吸が苦しそうで荒い、嘔吐下痢が止まらない、けいれんして呼びかけに応えないといった、ふだんと違う様子が見られた場合は、重症化の恐れがあるので急いで医療機関に行ったほうがいいでしょう。また、もともと重症化リスクの高い人たちも、必要に応じて早めに医療機関にかかったほうがいいと思います。

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 しかし、そうでなければ、外に出て他の人にウイルスをうつさないためにも、むやみに病院に行くのではなく、会社や学校を1週間でも10日でも休んだほうがいいのです。にもかかわらず、日本には「休んだら迷惑をかける」「早く治して会社や学校に行かねば」「そのためにも病院に」といった空気が蔓延しています。

 人手不足や人員削減で「一人でも休めば仕事が回らない」という会社も現実には多いでしょう。しかし、インフルエンザの人が出勤するほうが、会社の人たちだけでなく社会に対しても「迷惑」なのです。なにより、症状が悪化して長引いてしまったり、冒頭の女性のように不幸な事故があっては、取り返しがつきません。もうそろそろ、日本社会も「根性論」でインフルエンザを乗り越えようとする風潮を終らせるべきなのです。

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 現実にはなかなか難しいかもしれませんが、病欠の人が何人か出ても会社が回るような体制をつくることも経営者の責務ではないでしょうか。インフルエンザの季節こそ、「働き方改革」に知恵を絞るべきだと思います。