「うがい」が効果的とする研究はない
他にも感染予防になりそうな対策として「うがい」がありますが、日本感染症学会のホームページによると、上気道感染症やインフルエンザ様気道疾患に対する予防効果が認められるという報告はあるものの、インフルエンザそのものに効果的とする研究はないそうです(日本感染症学会緊急提言「一般医療機関における新型インフルエンザへの対応について」)。
ワクチンを打っても、マスクをしても、手洗いをしても、うがいをしても、万全とは言えないのです。だったら、政府やマスコミは予防のことばかり言うのではなく、「誰もがインフルエンザにかかりうる」ことを前提とした対策や情報をもっと強化すべきではないでしょうか。インフルエンザに「うつらない」だけでなく、「うつさない」ための対策にもっと力を注ぐべきなのです。
ふだん元気な子どもや大人は病院に「行かない」ほうがいい
流行中に38度以上の熱が出て、せきやのどの痛み、全身のだるさなどインフルエンザを疑う症状があったとき、どうしたらいいのでしょうか。私はいろんな専門家に何度もインフルエンザの取材をしてきましたが、その結論として、「ふだん健康な人」と「重症化リスクの高い人(体力の弱い乳幼児や高齢者、呼吸器の病気がある人、重度の糖尿病の人、がん治療中の人、免疫力が低下する病気の人など)」とは、対応を分けるべきだと考えています。
なぜかというと、ふだん健康な子どもや大人はインフルエンザにかかったとしても、十分に水分と栄養と睡眠をとって休養すれば、大抵は1週間から10日のうちに自然に治ってしまうからです。「早く病院に行って検査をしてもらい、薬をもらえば早く治る」と思っている人が多いかもしれません。しかし、抗インフルエンザ薬を飲んだとしても、症状が1日程度早く収まるかどうかの効果しかありません。ふだん健康な人は薬を飲む必要がほとんどないのです。
それに、医療機関に行くと他の患者から別の感染症(たとえばノロウイルスなど)をもらったり、逆に他の病気で通院している人や入院中の人たちにインフルエンザをうつしたりしてしまいます。病院の夜間救急外来には、急いで治療しなければ命に関わる人もいます。そこに軽症のインフルエンザの人が殺到すれば、重症の患者さんに迷惑をかけるだけでなく、ただでさえ過重労働の医師や看護師さんたちに負担をかけてしまいます。