「住みやすい街」赤羽の「弱さ」とは
こうした赤羽のまちの形成史はまちの弱さも浮き彫りにする。例えば荒川の洪水がそうだ。大正時代に荒川放水路ができたことで治水面での安全性はかなり確保されているとはいえ、ハザードマップを見れば、荒川氾濫の場合には赤羽駅東口のすぐ近くまで浸水するという。また、古くから市街地が形成され、さらにのちに赤羽の外縁となった岩淵や志茂といったエリアは家賃が安い代わりに地震・洪水時における防災の面で不安が残り、特に北本通りよりも東側には都内でもトップクラスの地震時に地域危険度を持つ場所がある。もし赤羽に家を探す時はこうしたリスクにも気をつけたい。
また、日用品や食料品の買い物には便利でも、ファッションや雑貨の店には弱い。「本当に住みやすい街大賞2019」の紹介では「NEXT吉祥寺」という文句もあるが、吉祥寺は百貨店や面的な商業集積があり、様々な買い物が済ませられる場所だ。それに対して赤羽の商業模様はほとんど大型スーパー3つ+LaLaガーデンの300m程度のほぼ線的展開しかなく、裏路地に入るとすぐ住宅地になる。店の選択肢は多少あるが、日用品・食料品の域を出ると店の多様性に乏しい。これでは「NEXT吉祥寺」と言うには少し無理があると言わざるを得ない。吉祥寺とはことなり、ちょっとした買い物は池袋・新宿あるいはショッピングモールのある埼玉県川口市に行くこととなる。普段暮らしていてちょっと物足りない部分もでてくるのではないだろうか。
本当に住みやすいまちというのはランキングが多少の参考にはなっても、実際見てみないとわからないものだ。ぜひ、イメージやランキングで決めつけるわけではなく、実際にまちを歩いて雰囲気を感じたり、「自分がもしも住むならば」というシミュレーションしたりして「自分にとって住みやすいまち」を見つけてみてほしい。
写真=鳴海行人