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がんになった本人より、その家族のほうがつらい

 私が尻の穴を見られてあたふたしていた頃、孤軍奮闘している人がいました。夫です。

 自分よりも10歳若い嫁がいきなりがんになった挙げ句、1歳になったばかりの我が子と突如ふたり暮らし&一手に家事を引き受けることになったからです。

寝相の悪い息子がベッドから転落しないように夫と私で挟んで寝ていたが、私が入院でいなくなったために彼が編み出した防御壁。

 あとで話を聞くと、夫は毎晩、1歳児の前で号泣していたそうです。そして涙でぐちゃぐちゃになった父の顔をワンダーな表情で見つめていた息子が、頬の涙をぬぐってくれたんだとか。

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 永遠に思えた夜泣きも、汗をかきかきしながらベビーカーを押して行った保育園も、ビールが飲みたくてしかたなかった授乳も、失ってはじめてわかる愛しい時間……などと私がおセンチに浸っていた一方、夫はこれらすべてを2週間1人でこなしきり、私が退院したときにはすっかりスリムな体型になっていました。

笑顔だががんのステージ告知前でめちゃくちゃ緊張していた。