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かつては発病から1カ月程度で死に至る病気だったが……

 急性骨髄性白血病の一種に、「急性前骨髄球性白血病」とよばれるタイプの病気がある。骨髄にある血液の種(これを造血幹細胞と呼ぶ)が血液細胞に成長していく際、白血球の中にある好中球という免疫細胞が作られる時に「前骨髄球」という細胞ができるのだが、これが異常に増えるのが急性前骨髄球性白血病だ。

 この病気になると血小板と血液凝固因子が減ってしまい、ちょっとしたことで出血を招く。かつてはすべてのあらゆる白血病の中でももっともたちの悪い病気とされていたが、1988年に中国人医師がビタミンA誘導体の飲み薬を使って行う「分化誘導療法」を開発したことで、治療成績は劇的に向上した。

「『ATRA』という薬を使うのですが、今でいう分子標的薬の走りです。かつては発病から1カ月程度で死に至る病気だったのが、この治療によって現在は5年生存率が70%を超えるまでになっています」(小松医師)

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さらに治療成績が向上している白血病も

 慢性骨髄性白血病については、さらに治療成績が向上している。

 名前からもわかるように、慢性骨髄性白血病は「急性――」よりゆっくり進行していく。病気の初期は「慢性期」と言って、ほとんど症状もなく安定した状態が続く。

 しかし、ゆっくりとはいえ病気は進行するので、ある一定ラインを超えると一気に悪化する。そして急性骨髄性白血病に似た状態に至り(これを「急性転化」と呼ぶ)、こうなると造血幹細胞移植などの治療が必要になることが多い。

 ただ、慢性期のうちに有効性の高い薬を使うことで、病気の進行を抑え、急性転化をさせないことが可能になってきているのだ。

「慢性期のうちに薬を使い続けることで、がん細胞がほぼ消えた状態を維持できるようになりました。しかも最近は、投薬を中止しても効果が持続するケースもあることが報告されています」(小松医師)

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従来型の抗がん剤を大量に使う

 一方、急性リンパ性白血病はどうか。

 この病気は、造血幹細胞から血液細胞が分化される過程で、いずれ成長するとリンパ球になるはずの細胞ががん化していく病気だ。

 これも以前は太刀打ちできない病気の一つとされていたが、やはり新薬の開発のおかげで治療成績は向上している。

 ただし、急性リンパ性白血病の治療は、分子標的薬ではなく、従来型の抗がん剤を比較的大量に使うことが多く、治療そのものは決して楽ではないという。

「急性リンパ性白血病は、小児と成人で治療法が異なります。子供のほうが強い抗がん剤を使えるので治療成績がよく、9割程度は治るようになりました。成人でも比較的若いAYA世代(15歳~30代)であれば、それに近い強力な抗がん剤を使えるので、やはり7割程度はいい結果が得られるようになっています。しかし、それ以上の年齢になると、体力的にこうした強力な抗がん剤治療は危険になってくるのが実情です」(小松医師)