最後の切り札が「骨髄移植」
このように、どのタイプの白血病にも抗がん剤を用いた化学療法が用意されており、また新薬の開発により治療成績は向上している。
しかし、すべての症例で思うような効果が得られるわけでもないことも事実。そこで、最後の切り札として用意されているのが「造血幹細胞移植」、いわゆる「骨髄移植」だ。
あらかじめ大量の抗がん剤で白血病細胞を完全に撲滅し、そこに正常な造血幹細胞を蒔くというイメージ。ドナーの体内から造血幹細胞の入った「骨髄液」を採取し、患者に点滴で投与する治療法。患者の体に入った骨髄液が骨髄に届いて定着すると、そこで造血幹細胞が正常な血液を作り出すようになる――という仕組みだ。
一人でも多くの人にドナー登録してほしい
これも移植技術の進歩によって、成功率は上がっているが、一番のネックは「ドナー不足」だと小松医師は言う。
「造血幹細胞は誰からでも移植できるわけでもなく、HLAという“型”の組み合わせが合わなければならない。この組み合わせは非常に多くて、よくて数百人に1人、珍しいタイプだと数万人に1人しか適合しないこともある。一番適合しやすいのは両親が同じ“きょうだい”なのですが、少子化の影響がこんなところに響いてきています」(小松医師)
多くが「骨髄バンク」に登録している人から提供してもらうことになるのだが、ここにも障壁があると小松医師は言う。
「ドナーから骨髄液を採取するにも2~3日の入院を必要とします。せっかくHLAが適合しても、仕事などの関係で見送らざるを得ないケースもある。そんな時は、患者にとって残念なのはもちろんですが、ドナー候補者にもつらい思いをさせることになる。候補者が多ければそうしたことを防げる可能性も高くなるので、1人でも多くの人にドナー登録してほしい」
池江選手の一件で白血病への関心が高まり、骨髄バンクへの問い合わせも急増しているという。これが一過性のものとならず、多くの国民が白血病という病気に対して、正しい知識を持つことが求められているのだ。