「社長の椅子が……。」
ひたちなか海浜鉄道は茨城県のローカル鉄道会社だ。経営危機で廃止されそうだった茨城交通湊線について、ひたちなか市が出資する形で第三セクター会社を設立。鉄道路線を存続させた。同社社長の吉田千秋氏は、2018年1月11日のFacebook投稿で社長席の危機を報告した。
経営が安定したら御役御免か、ひどい
ローカル鉄道はどこも経営が厳しい。常に廃線の危機にある。しかし、ひたちなか海浜鉄道は地域に寄り添う鉄道サービスを地道に続け、黒字化を達成。終点の阿字ヶ浦駅から国営ひたち海浜公園まで延伸する構想も動き出した。廃線の危機どころか、延伸まで構想される。各地で吹き荒れる廃止論議もこちらは無風。ひたちなか海浜鉄道は「奇跡のローカル線」といえる。
そんな鉄道会社で「社長の椅子が奪われる」と社長が自ら投稿した。吉田社長は会社発足時に公募に応じ就任した人物だ。経営が安定したら御役御免か、ひどい。いったい誰が社長の椅子を奪おうというのか。
その張本人に会いに行った。駅に棲み着いた猫のおさむ君だ。ひたちなか海浜鉄道の本社がある那珂湊駅に棲み着き、同社に保護されている。か、かわいい……。
「社長席が東側の窓のそばで、朝の日差しが入って暖かいんです。そのうち、直射日光で暑くなると逃げちゃいますけどね」
対応可能なときは、声を掛ければ会わせてくれる
吉田社長のFacebook投稿の中でも、おさむ君の「社長の椅子を奪うシリーズ」が人気。デスクに寝そべったり、ノートPCの画面を塞いだり。「飼い猫あるある」が展開されている。どれも「いいね!」などリアクションマークが多数。
「10年前に保護して、当時は獣医さんに5、6歳と言われました。それから10年ですから、もう15、6歳ですね。獣医さんから、そろそろあまり外に出さないほうがという助言もありまして。ふだんは事務所内にいます。
なるほど専用ベッドも用意されていた。おさむ君に会いたいと同鉄道を訪れる人も多く、駅員が対応可能なときは、声を掛ければ会わせてくれる。もう1匹、「ミニさむ」という雌猫がいる。彼女は数年前から駅周辺に現れた。おさむ君の妹分か嫁さんか。
「ミニさむは活発で、たいてい屋根裏にいます。人に構われすぎて面倒になっちゃったみたいで(笑)」
おさむ君もミニさむちゃんも那珂湊駅の人気者だ。ただ、駅長猫という表現はしていない。猫は猫。その生き方を尊重しているのかもしれない。