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利用者の声を受けて、勝田駅23時51分発の列車を増発

「東京や水戸で飲み会があっても、最終列車に間に合わないという声を聞いて、まずは終列車を繰り下げました。運行本数が少ない、乗りたい時に列車がないという声を受けて、市の施策として金上駅にすれ違い設備を作りました」

 上野発22時の特急に乗ると、勝田駅23時51分発の列車がある。那珂湊着は0時5分。こんなに遅い時間まで走っている第三セクターは珍しい。金上駅の設備増強で勝田と那珂湊の間の運行本数は倍増した。通勤利用者も増えている。

「通勤のお客さんは全国的に増えていて、そこに乗っかる形でこちらも増えている感じですね。勝田に日立製作所の事業所があるので、通勤事情に関しては都会の鉄道に似た傾向があります。景気が良く、正社員が増えて定期客が増えた。それと、若い人がクルマに乗らなくなったことも関係があると思います」

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 朝夕の通学列車が賑わっている。いままで40分間隔だった列車が20分間隔になった。この差は大きい。20分は友達とおしゃべりしながら待てる。しかし40分になると、家族に迎えに来てもらいたくなる。

「東日本大震災で運休したとき、女生徒の親御さんから、鉄道復旧を強く望まれました。娘さんの話では、鉄道車両は大きいので、なんとなく車内で棲み分けができるんですね。でもバスだと否応なしに詰め込まれてしまう。それは絶対嫌だと。で、お母さんが不承不承、クルマで送迎したそうです。バスじゃ嫌だという心理もあるのかなあと」

 

市長交代で延伸計画はどうなる?

 あとは運賃の問題。家計の負担を下げれば、いままで乗ってくれなかった通学生が乗ってくれる。そこで「年間定期券」を発行している。1ヶ月定期券7~8回ぶんの定期券の料金で1年有効。大幅割引運賃だとしても、新規利用者を獲得すれば収入は純増。親も自分の時間が増えて嬉しい。

 通学で列車に親しんでくれたら、通勤や出かけるときの鉄道利用にも抵抗がなくなる。そうか、1年定期の大幅割引は、マクドナルドのハッピーセットのように、子どもの頃から親しんでもらうための施策といえそうだ。

 

「ひたちなか市の応援も心強いです。私には『いままで万葉線でやってきたことをやってくれ』というくらい。その上で、湊線に合わせてコミュニティバスの接続ダイヤを工夫したり、市役所と湊線の駅を結ぶ路線を作ってくれたり。市から市民の皆さんに、鉄道とバス、公共交通を使いましょうとかけ声を出している。鉄道に対してここまでしてくれる自治体も珍しいと思います」

 ひたちなか海浜鉄道は、派手なキャンペーンや観光列車はやらない。しかし、阿字ヶ浦駅から国営ひたち海浜公園へシャトルバスを運行するなど、地道な努力の積み重ねで着実に利用者を増やした。2017年度は、単年度で初めて黒字化を達成した。じつは2011年度にも達成できそうだった。しかし、東日本大震災で被災、長期運休が目標を遠ざけた。

ひたちなか海浜鉄道の路線図(筆者作成)