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“平成生まれっぽくない”女優の木竜麻生が、5年かけてお父さんにデビューを認めてもらうまで

木竜麻生さんインタビュー #2

 映画『菊とギロチン』や『鈴木家の嘘』でヒロインに抜擢され、昨年は映画賞の新人賞を次々とさらっていった女優の木竜麻生(きりゅう・まい)さん(24)。落ち着いた佇まいで、どことなく平成生まれっぽくない木竜さんが「新潟の普通の女の子だった」頃から、上京したばかりの学生時代、そして女優を目指すまでを聞きました(全2回の2回目/#1より続く)。

木竜麻生さん、1994年生まれ

あんなにピリピリした父を見たのは、後にも先にも一回きりです

――さっき外で撮影していたときに、「むしろ寒いほうがいいくらいです」って。新潟ご出身なんですね。

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木竜 そうなんです。大学進学のタイミングで、上京しました。

――上京しようとか、東京の大学に行こうと思ったきっかけはありましたか。

木竜 新潟にはあまり大学も多くないので、高校の頃にはぼんやりと「上京するのかなあ」くらいに考えていましたね。もともとは東京に行きたいという気持ちも、正直それほどなかったかもしれないです。ただ、中学校2年生、14歳の時に東京へ遊びに行った時、今の事務所から声をかけていただいて。

――そうですよね、原宿でのスカウト。

木竜 クレープを食べたりして、竹下通りのあたりをぶらぶらしていたときだったと思います。一緒にいた母に名刺をくださって。当時、私は新体操部だったんですけど、父が私たちに「絶対に守らなくてはいけない」と唯一言っていたことがあって。

 

――木竜家の家訓でしょうか。

木竜 家訓みたいなものですよね(笑)。「1回始めたことを途中でやめない」という言葉でした。いったん中学で部活を始めたのならば、3年生の引退まではきちっとやりきりなさい、と。やめることはいつでもできるので。

――そのあと、スカウトのお話はどうなったんですか?

木竜 後日、車で5時間かけて事務所の社長が新潟の実家まであいさつに来てくださって。ただ、芸能の仕事をする事務所への警戒があったのか、あんなにピリピリした父を見たのは、後にも先にも一回きりです。

 新潟県内の高校に進学するつもりだったので、事務所に名前だけを置かせていただいて、ずっと待ってもらっていたような形だったんです。だから「東京に出るという道もあるんだ」という意識はありました。たまに東京へ行ったら事務所の方にお会いして、近況報告するくらいで。きちんとお仕事をさせていただいたのは、大学生になった19歳。スカウトから5年後です。その頃は、テレビCMや映画のお仕事でした。