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NYタイムズも盲信したアメリカ政府の嘘を、ただ一社暴いた“弱小”新聞記者たちの闘い

映画監督 ロブ・ライナー インタビュー

2019/03/28
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現代は民主主義の『スター・ウォーズ』だ

──この映画を撮影中は大統領選の最中だったわけですね。選挙は、映画をつくるうえでも影響を与えましたか?

RR いえ、実際には大統領選があったのは映画がほぼ完成していた時期だったし、直接的な影響はなかった。ただ、今の時代と強く呼応しあう作品となっていることは強く実感しました。まさにいまアメリカで起きていること、世界中で起きていることの映し鏡のような作品になっていると思います。アメリカは、世界中からいろんな民族がやってきて暮らしている国。多様な人々がうまく共存できている側面もあれば、残念ながら、人種差別や、ホモフォビアのような恐ろしい出来事も同時に起こっている。アメリカだけの話ではなく、地球の上でみなが仲良く暮らせるのかどうか、人類が存続できるのかどうか、その重要な岐路に我々は立っているわけです。現在は、民主主義のなかで悪と善が闘っている瞬間。民主主義の『スター・ウォーズ』だね(笑)。

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──報道の問題については、今の日本も、まさに同じ状況に置かれています。公共放送は政府の発表をそのまま報道するだけ、一方で政府に都合の悪い質問をする記者は会見の場から追い出される、といった出来事が続いています。報道機関が政府の言いたいことを代弁するだけの存在になりつつあるひとつの原因として、日本の記者クラブ制度という独特のシステムもあるかもしれません。

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RR メディアと政府は、ある種の共生関係にあります。一番大きな理由は、アクセスの問題です。メディアは、情報に近づく権利、真実を掴む手段を政府から得なければいけない。真実を究明するために、ある程度政府が言いたいことを受け入れながら情報を探ることになる。そうしないと、真実へと近づく手段を失ってしまうからです。アメリカでは、大手のメディアは大企業の子会社となっていることが多く、経営会社の意向を汲んで言葉を飲み込んでしまうことがある。報道機関は、絶対に独立した立場を保つべきです。