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「利用者のQRコード離れ」も嘘

「でも中国のキャッシュレスはニセ札が原因なんでしょ?」とそれでも言う人は絶えず、一人歩きしています。NHKの「ニュースウォッチ9」ですら、大学の先生がニセ札対策だという始末です。

 中国で実際に店舗や市場などで現金でやり取りする場面を見てください。店員が現金を偽札かチェックしてない場面なんていくらでもありますから。政府だってニセ札のためにキャッシュレスを普及させるなんて目標は立てていません。中国はニセモノが蔓延するから、ニセ札もひどかろう、だからキャッシュレスとドヤ語りですか。イメージだけでモノ語るのはいただけません。

小さな店やレストランに置かれているQRコードリーダー ©山谷剛史

 中国に関するネガティブ報道としては、他にも「他人のQRコードを不正に読み取ったり、不正なQRコードを読ませる金融犯罪多発により、利用者のQRコード離れが起きている」というものもありますが、これも嘘。中国現地在住者としては、人々はまったく変わらずキャッシュレスによる支払いを行っている様子を日々見ています。

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 中国にネガティブなイメージを持つ人は、デマであっても「中国は狡賢い人間が多いから、問題も発生しやすい、だからQRコードのキャッシュレスでも犯罪多発」というイメージしやすいストーリーに納得するのではないでしょうか。

日銀が発表した「モバイル決済利用率98.3%」レポート

 一方で、「中国のQRコード決済は普及していてすごいんだ」という結論ありきの言説も悩ましい限りです。

 例えば、中国のキャッシュレス決済を紹介する記事の中で、野菜や肉を売る市場でQRコードを掲示する写真が使われることがあります。しかし、QRコードが支払い手段のひとつとして掲示されているからといって、QRコードによるキャッシュレス決済が利用されることはまた別です。写真手前で印刷されたQRコードが置かれていようと、奥で店員と客が手を伸ばしていれば、現金の受け渡しをしていると考えたほうが自然です。

 確かに日本人が多くいる上海や北京や深センといった都市では、市場でもQRコードをかざしたキャッシュレス決済は見かけますが、中国の省都クラスの数百万都市ではそうした光景はまだ当たり前ではありません。

市場でも普及しているという報道はあるものの、省都クラスの市場ですらあまりキャッシュレスは普及していない ©山谷剛史

 日銀が2017年6月に発表した「モバイル決済の現状と課題」というレポートがあります。この6P目に、「回答者の98.3%が過去3カ月の間にモバイル決済を『利用した』と答えたとの報道もある」と書かれています。中国のCNNIC(中国インターネット情報センター)が出している中国インターネット統計報告という大本営発表ですら、インターネット普及率が6割弱となっています。インターネット利用者が6割弱なのに、キャッシュレス利用者が98.3%とか、もう意味がわかりません。

 日銀レポートの「元ネタ」は、実はイギリスのフィナンシャルタイムズ傘下の「投資参考」が1000人を対象に調査を行ったものでした。高所得者の多い東京都港区だけで調査を行うような感じで、上海の都心で調査を行ったのでしょう。この調査レポートはフィナンシャルタイムズの中文版でも掲載されました。詳細は割愛しますが、それを中国国営メディア新華社が引用し、さらにその新華社の記事を人民日報日本語版が紹介します。それを日銀は見つけて紹介したわけです。権威ある有能な人たちが何やってるんですか。誰もおかしいと気づかなかったのかと小一時間問い詰めたい。