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中国ではクレジットカードが普及しないうちに……

 ただ、QRコードを使ったキャッシュレス決済が万能なのかといえば、必ずしもそうではありません。例えば、自動改札機を通過するには、SuicaのようなFeliCaを活用したシステムのほうが圧倒的に速い。

 中国ではクレジットカードが普及しないうちにQRコードによる決済サービスが登場して、前述の通り、お得感と利便性から利用者が増えました。さらにシェアサイクルやシェアバッテリーなど、モノを借りるサービスの利用が可能になりました。

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 ただし、QRコードによるキャッシュレス決済でないと、そうしたサービスが利用できないかというとそうでもありません。

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 日本のシェアサイクルを見てもシェアバッテリーを見ても、クレジットカードでの利用が可能となっています。ベトナムのハノイやホーチミンシティでは、中国のシェアなんとか系の製品が導入されていますが、ベトナムではまだキャッシュレス決済が普及していないので、現金を利用します。

 中国でQRコードが普及した先に、送金はもちろんのこと、様々な有料サービスがスマホから決済できるようになりました。たとえばテレビやパソコンで有料の映像を見るときに画面に映ったQRコードをスキャンして、スマホに表示されたお金をキャッシュレスサービスから決済すると映像が見られるようになる。また電話代や水道光熱費や交通系の罰金も、キャッシュレスアプリから支払えるようになりました。確かに便利です。

公安(警察)での支払いもキャッシュレス ©山谷剛史

知人への送金もアプリが違えば不可能に

 とはいえ、いずれもクレジットカードが普及している日本ではできることなのですよ。だからこそ、カード決済でのシェアバッテリーやシェアサイクルが登場している。楽天EdyやSuicaなど、FeliCa技術を活用した電子マネーも普及しています。製品や画面に表示されたQRコードをスキャンした上で、FeliCa系の電子マネーの中に入ったお金を支払うこともできるはずです。スマートフォンがおサイフケータイの機能をもてばいいだけの話で、日本ではすでに普及しています。

 中国特有の事情を無視して、単に「流行っているから」と後追いしようとする姿勢は、冷静さに欠けているのではないかと中国でウォッチしてきた人間として思います。あまつさえ経産省が「プレミアム・キャッシュレス・フライデー」なんてものを発表する始末。キャッシュレスを知らない人に啓蒙するには長すぎる名前ですが、財布をスマホに変えさせるキャンペーンなのだから、1か月に1度ではなく毎日キャンペーンをやってほしいモノ。1か月に1回だけQRコードをかざして効果はあるのでしょうか。

 個人的にはQRコードによる支払いの選択肢として増えることはけっこうだとは思いますし、知人への送金がその場でできれば便利でしょう。しかし、とりあえず我も我もとなんとかペイが乱立するようでは、知人への送金もアプリの違いで互換性がないという場面が容易に想像できますし、不便になっているだけとしか思えません。