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連載クローズアップ

西加奈子「人を信じることの尊さについて書こうと思いました」

西加奈子(作家)――クローズアップ

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西加奈子さん 撮影 若木信吾

《まくことが好きなのは、男だけだと思っていた。/1位になったF1レーサー、優勝した野球チーム、土俵入りするお相撲さん、いつだって何かをまいているのは、男だ》

 そこからはじまる西加奈子さんの小説『まく子』(福音館書店刊)は、鄙(ひな)びた温泉街に暮らす11歳の慧(サトシ)が不思議な転入生コズエとの出会いから成長していく物語。神社の玉砂利や道端に積まれた干草と、なんでも“まく”ことが好きな女子、それがコズエである。

「はじめ、なにかを撒き散らすイメージからぶわーっと話が拡がって、そこに思春期の男の子を描きたいという想いがリンクして生まれた作品でした。映画化という話を聞いた時、まずは『まく子』を手にしていただけたことが嬉しくて。映画が大好きなので、映像としてどう表現されるのか楽しみになりました」

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 メガホンを取ったのは鶴岡慧子監督。性徴期のサトシを前に、女好きでだらしなく、息子とうまく向き合えない父親に草彅剛さん。ちゃきちゃきと温泉旅館を切り盛りする女将で母親の役に須藤理彩さんを据えた。