昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

佐々木 みんなが目指すロールモデルが「くだらない会社員なんかさっさと辞めろ」とか「非正規でぼやぼやしてないで生き抜け」みたいな、「勝ち抜くロールモデル」しかないというか、その先に道がないんですよね。それをやりたい人はやればいいと思うんですけど、例えば1000人に1人ぐらいはすごく優秀な人がいて、家の環境がどうであれ、生き抜くことができる人はいるんだけど、ほとんどの人はそうじゃない。だったら、普通の人たちがお互いに助け合いながら生きていける社会を作らないと、この先に未来はないですよ。

吉川 そうですよね。なぜ私が「貧困層を搾取する人」や「見えざる弱者」のような記事を書くかというと、そういう風に社会を変えていくには、まずはこうした状況をみんなに共有してもらわないといけないからなんです。みんなのロールモデルが「1000人に1人」になってしまっている以上、キモくて金のないおっさんや見えざる弱者たちは社会からこぼれ落ちたままになると思うんです。

 

共感ができるかどうか、弱者トーナメント

佐々木 そもそも「キモくて金のないおっさん」の背景は、1990年代にバブルが崩壊して、その後もリーマンショックを挟んで「氷河期」が2回やってきて、そういうときに転落した人が、結婚もできずそのまま生きていって……という部分だと思うんです。

吉川 その第1世代が93~94年に就活していた人たちだとすると、歳でいうと今は45歳前後ですかね。

佐々木 彼らがまだ20代の頃は「非正規でもいつか巻き返しがあるだろう」と期待があったと思うんだけど、だんだんおじさんになっていって、しかも履歴書を見ても正社員歴がないという。深刻なのは、政府の非正規雇用対策でやっていた引きこもりの調査には、少し前まで30代までしか調査対象に入れていません。

 

吉川 当の第1世代が入っていませんね。

佐々木 そう。だから、そういう人たちが社会の枠組みからこぼれ落ちてしまっている、というのが現状なんですよね。例えば45歳で結婚していなくて、非正規雇用で、太っていたりすると、なかなか世間的には「弱者」だと認定されづらい。そういうおじさんが路上で倒れていて、食べ物にも困っていそうでも、果たして周囲がその人を救えるか疑問ですよね。

吉川 確かに「襲われるかもしれないし、怖くて声もかけられない」という人は多いかもしれません。

佐々木 そういう意味では、「シングルマザーの女性」が弱者のトーナメントでは一番強いかもしれない。「シングルマザーはか弱いから、襲ってくることはまずないだろう」と。肉体的な強さと外見の気持ち悪さみたいなものが、弱者の問題には密接に絡んできてしまっているので、よけいに問題が難しくなっていますよね。