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スマホのアプリすら自分でインストールしないような老境

 まあ、私も老いた両親を見ていると、昔はあんなに新しいもの好きのメカフェチだったのにいまやスマホのアプリすら自分で探してインストールしないような老境に差し掛かっていまして、時の流れというのはかくも残酷なものかと思ったりもします。

 デイケアの施設に連れて行くと、時代に取り残された人々がハイテクの恩恵を蒙ることなくただただ最期の瞬間をゆっくりと老人がテーブル囲んで輪になって、若い人と一緒に歌いながら紙工作やってるんですよ。「老いる」というのはかくも残酷なものなのでしょうか。そういう人たちのお世話で本来は未来を背負っているはずの若い人たちがせっせと働いているのを見ると、日本の退廃を突きつけられた気分になって、アメリカや中国を見習い、最新技術を駆使できる日本社会たろうという掛け声のむなしさすらも感じるわけであります。

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 先日も、タクシー業界が経済産業省の進めようとしている「ライドシェア」なる白タク推進の方針に反対して、400台のタクシーが集まって経産省庁舎を囲みデモンストレーションをしていました。人工知能が普及し自動運転の時代になればタクシーの運転手は真っ先に仕事がなくなると煽られ、一方でライドシェアが盛んになればUberや中華系アプリなどでの白タク配車が当たり前になってしまう状況で、タクシー運転手や業界の危機感はそれは凄いものがあるでしょう。

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付加価値の乏しいビジネスばかりが花盛りに

 一方で、白タクであれ民泊であれ、いまの日本のイノベーションは全体的に「そこの業界で働く人の賃金を下げる方向で拡大する」という付加価値の乏しいビジネスばかりが花盛りになり、これって本当に生産性を引き上げるイノベーションなのかと疑問に思う部分もあります。誤解を怖れずに言えば、低賃金の素人をデジタル技術でスキル底上げして、それまで専業でやってきたノウハウのある人たちの稼ぎを下げる仕組みに他なりません。生産性が向上するわけではなく、サービス水準もさほど上がらないのに、これがイノベーションだデジタル社会の新しい姿だと言われてもピンとこねえよというのが正直なところです。

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 確かにタクシー業界は規制に守られており、旅館やホテルは旅館業法に縛られているとはいえ、そうであるがゆえに働く単価が維持され仕事に対するクオリティが担保されている面もあったわけです。が、うっかり規制をドーンと緩めたときに、米ニューヨーク市で起きているようにUber、Lyft、Via、Junoなどのアプリ4社の運転手が増えすぎたため、市が運転手の新規雇用を抑制する方針を打ち出すなど混乱が続いていますし、宿泊先を中華アプリ内で決めてしまう中国人旅行者はどこにどれだけ宿泊しているのか分からず民泊地帯の治安が悪化してしまうなどの問題もまた指摘されるわけであります。