「近親者や世間からの強い非難や法による罰則で、違法薬物への依存者は救われるか。」

 やっとこういう切り口のコラムがきたか。ピエール瀧容疑者の薬物逮捕から6日経った朝の、日経新聞1面の「春秋」(3月18日)。

 コラムは「排除よりつながり、処罰より治療や支援との視点が大事」と紹介しつつ、

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《相変わらず「白い粉」の映像でおどろおどろしく描く番組が目立つ一方、依存症を社会の課題としてとらえ、相談窓口を紹介するなどの試みも増えている。断罪から支援へ、薬物依存を見る目の転換点となるかもしれない。》

 と締めた。

2014年3月、「日本アカデミー賞」授賞式 ©文藝春秋

 そうなのだ。多くの報道は「ピエール瀧、20代から薬物使用!」と大きく驚いてみせるが、それは「20代から止めたくても止められなかった」「誰に相談していいかわからなかった」という意味とセットかもしれない。そんな視点も必要な社会問題だと思う。

『麻雀放浪記2020』にしみじみする

 さて今回書きたいのは映画『麻雀放浪記2020』(白石和彌監督)についてだ。ピエール瀧容疑者の出演作なのだが、私はこの作品に関する最近の流れにとてもしみじみするのです。もっと言うとくすぐったい。そのワケを書いていく。

1964年10月10日、東京オリンピックの開会式 ©文藝春秋

 先月、次のネット記事が話題になった。

「斎藤工主演映画お蔵入り危機 東京五輪中止設定に“クレーム”」(デイリースポーツWEB 2月13日)

 俳優の斎藤工が主演映画『麻雀放浪記2020』が公開危機に陥っていることをイベントで明かしたというのだ。