国民生活センターが3月14日、「あなたの歯科インプラントは大丈夫ですか―なくならない歯科インプラントにかかわる相談―」という報告を発表した。
歯科インプラントにまつわる苦情や相談をまとめたこの報告は、2011年12月に同センターが発表した「歯科インプラント治療に係る問題―身体的トラブルを中心に―」という報告以来、約8年ぶりの歯科インプラント治療にまつわる集計だ。
痛みやしびれなどの身体症状が出るケースも
数十万から百万円を超えることもある高額治療を受けているのに、痛みやしびれなどの身体症状が出たり、ネジの緩みや破損などの苦情が、同センターには毎年相当数報告されている。
どうすれば、こうした不満を持たずに済むのだろうか。
歯科インプラント治療とは、歯を失った部分の顎の骨に、チタンなどの金属製の歯根を埋めて、そこに人工の歯をかぶせて形成する治療法。義歯やブリッジより咀嚼機能に優れ、より「自分の歯」に近い口腔環境を再現することができる。
日本では1970年代から臨床導入され始め、現在では全国に約68,000施設以上ある歯科診療所のうち、およそ35%にあたる約24,000施設でこの治療が行われていると見られている。
歯科インプラント治療は、一部の特殊な症例を除いて健康保険の適用外、つまり自由診療なので、かかる費用は全額が患者の自己負担となる。施設によって費用は異なるが、1本あたり40~50万円程度の価格設定をしているところが多く、複数本の治療となると100万円台の出費をともなうこともある。
「満足度」を比較すると……
それだけに、治療の失敗や、治療によって起きる合併症は患者の不満を高める。医療ミスとは言えないまでも「期待通りの効果が得られなかった」というだけでも、トラブルの要因となりやすい。
今回の発表によると、寄せられたトラブルの内容は多岐にわたる。
多い順に「痛み」「インプラントのぐらつき、脱落、要撤去」「腫れ」「化膿、炎症」「麻痺、しびれ」「咬合不全」と続く。
こう書くと、インプラント治療があたかも悪者のような印象を与えそうだが、そうではない。
同じ報告にはこんな記述もある。「満足度の比較」だ。
同センターがインプラント治療経験者500人、ブリッジ治療経験者500人、入れ歯治療経験者400人を対象に「満足度」を訊ねるアンケート調査を行ったところ、「満足」と「どちらかといえば満足」と好意的な回答を寄せた人の割合が、入れ歯の44.8%、ブリッジの60.0%に対してインプラントは85.2%と大きく上回っているのだ。特に「咀嚼機能の向上」を実感する患者は多く、インプラント治療を受けた人の65.4%は「よく噛める」と評価している。