「当面の学費がない」と嘆く大学生
一方、私立大学に呼ばれると、様相はもっと深刻になります。状況はもっと込み入っていて、研究室での拘束時間が長すぎて経済的に成り立たない学生さんが変なローンに手を出してしまい収拾がつかないとか、1年以上の休学を挟まないと大学卒業までの学費が捻出できないなどという事例が多発しているようです。20歳そこそこの、人生で一番学べる貴重な時期にアルバイトで時間を使うのは若き時間の浪費のような気もするんですよね。
もちろんそういう学生のために奨学金があるわけなんですが、昨今よく話題になるように事実上学資ローンみたいなもので長きにわたって返済しなければならない場合も少なくなく、また、寄付型の奨学金は競争率が高くて、これはこれで大変そうです。
実際、私が以前経営していた会社にやってきた大学生が「当面の学費がない」と宴会で嘆いていたので、個人的に貸し付けることも少なくありませんでした。せっかく学びたいというのに、カネがないというのは切ないので当面必要な額はなるだけ貸してあげるわけなのですが、卒業して、私の会社に就職しなかったケースできちんと返済されるのは5人に1人ぐらいでしょうか。別に逃げ回ってるんじゃねーよと言いたいわけではないのですけど、返せないなら返せない、いま苦しいなら仕方がないので、メール一通電話一本一言くれないかなと思うわけであります。
マイナーな立場の人が零れ落ちるのです
そして、なかなかいい就職先が見つからないぞとなると、大学生は悲惨です。いや、見た目の大学生の就職率は最低だった91%(2011年)から98%(2018年)まで伸びましたと凄く良さそうに見えるわけなんですけど、5年前にちょっと講座をやらせてもらった東京大学の子たちもほぼ半数は就職5年以内にみんな転職してしまっています。はえーよ。
でも、社会に出てみて「あれ? この会社ブラックじゃね?」とか「言われていたのと随分違う」となって、すぐに転職ができる人はまだ救われています。地方の大学を出てなんとか就職したものの転職もままならず安い給料でこき使われて結婚予算も作れずに悶々としている若者の話を聞いていると、この状況で安倍政権が「展望は明るい」とか強弁しているのはさすがにどうなんだろうと思うのです。それでも本当に景気が悪ければ就職などできないわけですから、アベちゃんでまだマシだと言われるとそうなのでしょうが。
どうしても、社会の形を考えていくとマイナーな立場の人が救済や対策の手から零れ落ちてしまうのでしょう。そのマイナーだったフリーターもシングルマザーも、晩婚化、ブラック企業、転職上等の時代にいつの間にか人生の選択として当たり前のようになって、いま問題になっているということです。もちろん、そういう人も視野に入りつついろんな議論はあるわけですが、先日、某所で行われていた「働き方改革と人生100年時代の企業経営」とかいうシンポジウムで自民党の小泉進次郎さんがいろんな施策や構想を打ち出す発言をしていたようです。