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苦学生、フリーランス、シングルマザー、傷病者……必死に生きるとは何か

パフォーマンスで「働き方改革」と言ってる場合じゃない

2019/03/21
note

イケてる人たちであることが前提

 でもこれ、失業保険を支払っていないフリーランスや、うっかり休業してしまったら経済的に立ちいかないであろうシングルマザーや傷病者(メンタルヘルスに問題を抱えている人も含む)は零れ落ちてしまうんですよね。このシンポジウムの主催者も喋っている小泉進次郎さんも、みんな立派な人たちなので、対象になる人たちはみんな夫婦揃っていて、失業保険を支払っていて、休業期間が終われば原職に復帰できるようなイケてる人たちであることが前提のスローガンを打ち出しているんじゃないかと思うんですよ。

 いま実際に育休・産休界隈で起きていることは、私も先日記事を書きましたが「子どもを産んで育てようという人たちに対する結構冷たい目線」であって、こういう働き方改革がパパママ揃った健康でちゃんとした勤め先にいる人たちを前提にしている限りは、困っている人たちへの手助けにはならないんじゃないかとすら思います。

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「第4子出産で産休・育休7年」NHK青山祐子アナウンサーの退職への「もらい逃げ批判」が面白い件(山本一郎) - Y!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/byline/yamamotoichiro/20190315-00118412/

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一つ間違えば生活保護待ったなし

 突き詰めれば、国家が国民の出産育児をより良いものにしていくにあたり、企業が男性育休を認めるような福利厚生を整備しろと号令をかけたところで、本来は国家が担うべき福祉を民間に押し付けている限り「そういう企業には勤めていない大多数の人たち」はいつまでもその働き方改革とやらの恩恵には与れないのでしょう。

 そして、今度は経済産業省が「プレミアム“キャッシュレス”フライデー」とか言い出して、そもそも金曜日に時短勤務させてもらえる企業がどのくらいあるのかすら判然としないのに、さらに経産省が進める電子マネー決済を推進するという駄目なテトリスみたいな政策の積み上がり方をしていて本当に残念です。

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 おそらくは、名前が売れている人や蓄財ができている人でもない限り、フリーランスや片親で頑張っている人々は、一つ間違えば生活保護待ったなしという危機感や焦燥感を抱きながら日々子どもを育てつつ働いているという現実を見てほしいんですよね。いますでに必死に生きている人たちが大勢いるところで、パフォーマンス的に「働き方改革ですよ」「ワークライフバランスが大事です」と言っても、お前それどころじゃねえだろと誰かがちゃんと丁寧に彼らの頭から水をかけてあげる儀式が必要なんじゃないかと思うのですが。

苦学生、フリーランス、シングルマザー、傷病者……必死に生きるとは何か

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