新「元号おじさん」は菅官房長官か
そんな悲壮感をもって新元号の発表を待つひとたちの視線の先で、元号を発表することになるのが官房長官の菅義偉である。「平成」に準じて、今回も官房長官が発表する見込みだ。
新「元号おじさん」となる菅は、秋田の農家を継ぎたくないとの思いから、東京に出てきて段ボール工場に住み込みで働いたり、大学の夜間部に通ったりするうちに政治家の秘書の働き口をみつけ、政治の世界と縁をもつことになる。いまどき珍しい「昭和」の匂いのする政治家だ。
菅が仕えた代議士・小此木彦三郎の子息は、秘書時代の菅をこう述懐している。「親父が通産大臣のときと思いますけど、『週刊新潮』が夕ぐれ族という売春組織の特集記事を書いたことがあったのです。その顧客名簿にうちの親父が載ったんです。で、菅さんが横浜駅のキオスクとか、そこら中で売っている『週刊新潮』を買い占めた」(注6)。こんなことまでやっていたのである。
ひとに仕える。裏で支える。これが天職であったのかもしれない。代議士となってからも、梶山静六を小渕の対抗馬として総裁選に出馬させたり、ふたたびの安倍政権誕生に尽力する。そんな菅についての評伝のタイトルは『影の権力者』(松田賢弥)、『総理の影』(森功)。最高の賛辞だろう。
裏方は恨みを買ったり敵をつくったり
最近では二階俊博が「安倍の次は菅」などとうそぶきさえする。「平成おじさん」の小渕は凡人ゆえに敵がおらず、嫉妬もされず、おかげで竹下派が分裂した際に派閥を継ぐことができた。表のトップに立とうという者は敵をつくらないのが大事だ。一方で裏方はどうしても恨みを買ったり敵をつくったりする。影の首相と言われた野中広務もそれを自覚し、首相候補の呼び声がかかろうとも、滅相もないと遠慮した。果たして菅は小渕同様に元号発表した官房長官から総理大臣になれるのか。
4月1日。どことなく目立つことを嫌ってみえる菅に、否応なしに全国民の視線が集中する日がくる。その場に宿敵・望月記者がいるかどうかはしらないが。
(注A)「文藝春秋」2019年4月号
(注B)「文藝春秋」2018年2月号
(注C)iRONNA(https://ironna.jp/article/11670?p=1)
(注D)久世光彦『ニホンゴキトク』講談社
(注E)「月刊WiLL」2018年9月号
(注F)森功『総理の影』小学館