昨季J1で12得点。コンサドーレ札幌の絶対的エースとして、J2優勝、J1での上位進出に貢献してきた都倉賢。
5年間を過ごし、強い愛着が生まれた北海道を離れ、今季セレッソ大阪へ移籍した。32歳にしてJ1キャリアハイを記録した男は、幼稚舎から慶応に通い、大学在学中にプロになる。しかしその後の道のりは決して順調ではなかったと本人も認める。
そんな都倉に今季の決断、そしてサポーターから呼ばれる愛称について聞いた。(全2回の1回目/#2へ続く)
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セレッソに感じた「コーヒーの香りがいいな」のようなワクワク
――5年間在籍したコンサドーレ札幌を離れて、スペイン人のミゲル・アンヘル・ロティーナ監督が就任したセレッソ大阪に移籍しました。大きな決断をするなかで、何が決め手になったのでしょうか。
「僕は今年、33歳になります。自分の価値をシンプルに評価していただいたことは素直にうれしかったですし、対戦相手としてセレッソと戦ってみて魅力も感じていました。移籍の話をいただいて、セレッソに身を投じたらどうなるかってことを想像したときに結構ワクワクした自分がいたんです。これは別にコンサドーレではワクワクできないということではありません。去年もその前もこの5年間はコンサドーレでプレーすることを選択してきたわけですから。ただ、現役生活が残り少なくなってきたなかで、そのワクワク感の度合いを大切にしました。抽象的な表現になってしまいますけど、朝起きたらきょうは天気がいいな、とか、におってくるコーヒーの香りがいいなとか、それによって今日一日、ちょっと先の明るい未来を想像できて、何かワクワクを感じる、胸が高鳴る。セレッソから話をいただいたときに、そんな感情を持ったことを覚えています」
――プロのサッカー選手に移籍の決断はつきものです。
「確かに大きな決断ではあるんですけど、(言葉にするなら)一つの選択だと思うんです。たとえば目覚まし時計で起きる時間の設定を変えるのも選択ですし、日常を切り取ってみても選択の連続です。そういった選択を積み重ねてきて今があると思っています。その延長線上に、今回の移籍があったというだけ。普段、自分が選択してきたその積み重ねが、セレッソに移籍するという判断をさせたと僕は考えます」