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――そのとき日の丸のために結束しようとか、日の丸のために戦おうとか、そういうことはチームの中で言われましたか?

イチロー 王監督は最初の日に、集まったときに、それは言われました。しかし、ボクはそのときは最初にいったように、みんなにその気持ちが強かったとは思えない。仕方なく来たという雰囲気すらあったかもしれない。実際は分からないですけど。だからすべてはアメリカが作ってくれたもの、結果的にはね。そう思います。

©文藝春秋

――イチローさん自身は、最初に王監督の話を聞いたときにどう思いました?

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イチロー 王監督の話を聞くよりも、ボクは王監督が日本代表の監督を承諾されたこと、その覚悟は非常に大きいと感じていたので、だからボクもそれに賛同したんですけども。王監督があれを言ったことよりも、王監督が監督をやるという決断をしたことの方が、ボクにとっては意味のあることでしたから。そこでは色んなことを感じましたよ。

――例えばどういうことを感じました?

イチロー 例えばどういう覚悟をもってやっているのか。ものすごいリスクがあったと思います。当然、いま現役の監督をされていてチームを離れなければいけない。それでもあの大事な時期に……日本のために立ち上がっていただいたわけですよね。それはもう難しいことではないですよね、(覚悟の大きさを)想像することがですね。

2006年WBCで日本代表の監督を務めた王貞治 ©文藝春秋

――もちろん国籍のことも考えられたと思いますし……。

イチロー うん……。

――それが日の丸を背負うということもあったと思います。

イチロー ハイ。

――そういう色々なことを含めてということですね。

イチロー もちろんです。

 日本代表監督を務めた王が中華民国籍であることは改めて説明する必要はないだろう。中国民国籍の王が日本代表を率いることについては、王自身は大会中の記者会見で「私は日本で生まれ、日本で教育を受けた。国籍はちがうが日本人的な人間と思っている」と語っていた。

©文藝春秋

――イチローさん自身が決断した理由というのは王監督の決断があって、でも、それだけではないですよね。

イチロー もちろんです。アメリカに来たからだと思いますね。ボク自身がいま日本でプレーしていたら、もし、声をかけられたとしても、(WBCでプレーを)やっていなかった可能性はありますね。

――アメリカに来て日本人であることを意識した……。

イチロー そういうことですね。