昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2019/03/26

「奥深い民族ですから」

 オリックスで9年間プレーし、94年から7年連続首位打者を獲得したイチローは、2000年オフにポスティング制度を使ってシアトル・マリナーズと契約を結んだ。メジャー1年目の01年にはいきなり首位打者と新人王を獲得。その後も04年には262安打を放ってMLBの年間最多安打記録を塗り替えるなど数々の記録を打ち立てているのは説明するまでもない。

2004年、メジャー安打記録達成 ©文藝春秋

――日本人として意識するのはどういうところでですか?

イチロー それは一つではないですね。そんなのもう5年間やってきて、色んなものを感じてきて、簡単に言えば日本のことが、日本にいるときよりも大好きになっているということですよね。

――例えば?

イチロー 日本人の奥深さみたいなこと。色んなところで感じますよ。例えば丁寧語があったりとか。言葉の使い方で色んなこと……その人の人格が見えたりとか。立場をわきまえているのかどうかとか、そんな細かいことまで言葉を交わさないでも、会釈ひとつで色んなことが交わせる。そういう奥深い民族ですから。アメリカのなんていうかな……上っ面なところ……上っ面な人が結構多いんですけど、要はそういう人たちにボクらは負けるわけにはいかないと思ったことが大きいですよね。

©文藝春秋

――日本人のプライドということですか?

イチロー ま、それもあるでしょうね。

――そういうものは日本では感じられなかったですか?アメリカで比較されるものを見て、感じたということが大きかったですか?

イチロー 当然、そういうことですね。

――話は日の丸、君が代ということにもどりますが、野球の場合は国際試合の前に国歌演奏しますよね。WBCの場合も君が代が演奏されたんですけど、それを聞いているときはどういう気持ちでした?

イチロー もうちょっと軽快なほうがいいなと思いましたけどね。試合が始まる前にね。そういうのはありましたけど……。最後の決勝の前の君が代の最後のところでね……何ていうのか……“ガシャーン”ってやるやつね……シンバルっていうの(筆者注=キューバの応援団が鳴らした)……あれはないなと思いましたね。ああいうのを見るとちょっと失礼な感じもするし、やっぱりああいうときに、ああいう瞬間に日本人としての“やっぱりオレたち日本人で、日本が好きなんだなあ”って思いました。カチンときましたね。

©文藝春秋

――韓国戦で向こうのナショナリズムが前面に出てきて、すごい応援だったと思います。ああいうナショナリズムは日本人の場合はなかなか出にくい。韓国のああいう姿をご覧になって、日本人のナショナリズムに関してはどう感じますか?

イチロー いやー、日本の人も……今回が野球の世界で初めてだったということもありますけど、サッカーの世界ではね、世界と戦ってきている競技の世界ではね、日本人のそういうものも強く感じるわけですから。ボクは日本人ってやっぱり素晴らしいなあと思いますね。あの韓国の応援を見ても。で、韓国の選手がいいプレーをすれば日本では大拍手が起こるわけですから、やっぱり日本人って器の大きい感じもするし。今回色々な発見がありましたよ、ボクの中では。

©文藝春秋

――その他の部分でどんな発見がありましたか?

イチロー ボクはだから野球、今回は全員がプロで、プロのオールスターで臨んだわけですから、ボクは勝つだけではいけなかったと思うし、勝つことが最強のチームではない、いわば立ち居振る舞いみたいなものがプロとして大事なことだと思ったし、そういうことが日本の人というのは考えられていると思いますね。