「君も実践してごらん 人生の大事な哲学 周りの人を愛そう そうすればハッピー 誘惑に負けず ケンカせず 真面目にコツコツ生きよう」(映画『パディントン2』より)
「道徳回帰作品」の特徴は、ミクロでやさしい世界観、善人ばかりのキャラクター、ポジティブな楽観と利他主義、エモーショナルかつパーソナル、共感と理解の重視など。
「ナイスコア」とも呼ばれるこのムーブメントの代表作には、人気ドラマ『グッド・プレイス』や『ブルックリン・ナイン-ナイン』が挙げられるが、英仏共同製作映画『パディントン』シリーズや以前文春オンラインで紹介した『テラスハウス』など、米国にとっての国外作品も多い。
「より善き人間になるには」を指南する番組が流行
視聴者がより善き存在になるための“テクニック”を紹介する「ナイスコア」コンテンツ人気も高まっている。たとえば、ゲイの5人組ファブ5(ファイブ)が困っている人々を助けるNetflixの人気リアリティショー『クィア・アイ』。このポジティブでやさしい番組が伝授するものは、最先端ファッションではなく「セルフケア」、自分自身を愛し慈しむ方法だ。
予告編を見てみよう。「自信がない自分を捨てて好きになってあげよう」、「助けを求めてもいい」……まるでソーシャルワーカーのようなファブ5に肯定された人々は、こぞって涙していく。「自分を気遣うことのすばらしさに気づいた」と。
文春オンラインでも紹介したように、破局を「成長の糧」と定義するアリアナ・グランデのヒット曲『thank u,next』、そして近藤麻理恵による番組『KonMari ~人生がときめく片づけの魔法~』にも「セルフケアのテクニック」を授ける側面がある。「ときめき」重視の片づけとは「安心できる場所を整えること」でもある。それゆえ、近藤にメソッドを伝授された依頼者は「これで人生の新しいスタートが切れる」と感涙するのだ。
こうしたコンテンツは、近年テック業界を発端に注目されている「ウェルビーイング」をレッスンするポップ・カルチャーとも言えるだろう。