独特のアニメーションによる映像インスタレーションで知られる現代美術作家の束芋(たばいも)さん。「透明な歪み」と題された個展を開催する。
「ここ数年、朝日新聞で吉田修一さんの連載小説の挿絵を描いたり、既に存在する美術品を自分で解釈し、再制作するといった作品を手掛けてきました。これまでの展覧会では作品の着想を得た原作を明示してきたのですが、今回はそうした原作との関係を断ち切っています」
展示されるのは新作のアニメーションを含む10作品ほど。そのすべてに「原作」があるが、敢えて明かさず、見る人が自由な発想で作品を楽しめるようにしたという。
「また初の試みとして油彩画を展示します。自分の感覚を油彩として描くことで何が起こるのかを見てみたかったのです。展示室には私が普段使っている家具を持ち込み、家具と油彩がひとつの空間を作る展示となります」
彼女の映像インスタレーションは浮世絵にも通じる線描のアナログ感が魅力だ。どこか昭和の匂いのする生活感に満ちた情景が、次第に悪夢的な幻想へと変貌していく。その独自の世界は国際的にも高く評価されている。
「私はごく普通の人間ですが、ちょっとだけ歪んだところがあります。デッサンも上手ではなくて、それが歪みとして作品に出てきます。そこに私のアーティストとしての個性があると思います」
INFORMATION
「透明な歪み」展
4月26日~6月2日
ポーラ ミュージアム アネックスにて