「基地のある沖縄でアメリカ人男性と日本人男性が恋に落ちることは可能だろうか? このテーマをもとに2012年から『アメリカン・ボーイフレンド』という現代美術の連作プロジェクトを発表してきました。そのなかで次第に物語的なものへの関心が生まれたことが、小説を書き始めたきっかけです」
こう語るのは現代美術作家のミヤギフトシさん。彼の初の小説集『ディスタント』が今月刊行される。自伝的な3つの中編では、故郷の沖縄の離島や那覇、大阪、東京、そしてニューヨークを舞台に、多感な少年の内面がセクシュアリティの意識を踏まえつつ、繊細な文体で綴られていく。
「同じ沖縄でも僕が生まれた離島と基地のある本島では、自分とアメリカとの距離感が微妙に変わってきます。小説では、アメリカの映画や音楽がそれを象徴するものとして出てきます」
現代アートやTVゲーム、クィアカルチャーなどへの言及も多く、90年代以降の若者文化の変遷を時代の空気感とともに味わう面白さもある。
「今回の小説は『アメリカン・ボーイフレンド』の一部だと考えています。小説を読んだ人が、僕の美術作品にも関心を持ってくれれば嬉しいです」