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黒字化達成 JR貨物・真貝康一社長が語る「西日本豪雨災害を乗り越えて」

JR貨物・真貝康一社長インタビュー #1

2019/04/24
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さらなる被害が予想される南海トラフ地震への対策

――普段は貨物列車の通らない山陰本線を使った迂回運転などの「応急処置」も話題になりました。

 真貝 今回の災害では、広範囲に、同時ゲリラ的に線路が流されたことで被害が拡大しました。しかも、がけ崩れと河川の氾濫が同時に起きたため、線路だけでなく道路までが何カ所も寸断された。線路をなおす工事車両が現場まで入れないので、まず道路を修理して、それからようやく線路の工事に手を付けられるという状況となり、復旧までに時間がかかってしまいました。

 迂回列車の他にもトラックや船による代替輸送を行いましたが、それでも確保できた輸送量は通常の3割弱に過ぎません。可能な限り輸送量を確保すべく努力をしましたが、鉄道、船、トラック、航空機と、それぞれの特性を生かした平常時の輸送体系が出来上がっている中で、大規模災害への緊急対応には限界があることも事実です。今後は、輸送モードごとの個別対応だけではなく、貨物輸送にかかわるすべての輸送モード全体で、相互補完し合う災害時の対応策を考えていく必要もあると思っています。

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西日本豪雨災害の後に運行された山陰迂回列車(JR貨物提供)

――不通期間が100日に及ぶのは、阪神淡路大震災の時を超えました。

 真貝 阪神大震災の時は75日、東日本大震災は42日にわたって貨物列車を走らせることができませんでした。今回はそれらを凌駕する規模で、過去最大級の影響を受けたことになります。

 そう考えると、いずれ来るであろう南海トラフ地震への対策は急務です。そのためには災害に備えた対策が不可欠で、これについては利用運送事業者とともに国に要請をしました。国は3年間で7兆円の災害対策の緊急対策費を準備し、これには鉄道への予防保全対策費も含まれています。

経営が厳しいJR旅客会社が増えた現状

――JR貨物は、基本的に自社としての路線をほとんど持たず、旅客鉄道各社に線路使用料を支払って貨物列車を走行させる形になっているため、インフラ整備も旅客鉄道各社に委ねる形になります。

 真貝 昨年の災害においても、早期の復旧をJR旅客各社にお願いをしました。各社におかれては、昼夜分かたず、懸命な復旧工事に取り組み、当初の復旧予定をかなり早めて再開することができました。

©文藝春秋

――経営が厳しいJR旅客会社があるなかで、JR貨物と旅客会社との間の線路使用料は維持できるのでしょうか。

 真貝 線路使用料のルールについては、1987年の国鉄が分割民営化された際、各社の経営が成り立つために設定されたスキームの一部です。当社が事業を継続していく前提になるルールであり、今後も、物流の面で全国の各地域の経済やそれを支えている人々、地域にお住まいの方々の生活に対して貢献する使命を果たしていくために必要なものです。