国鉄分割民営化から32年。昭和の終盤に発足した7つの鉄道会社の中でも、当時経営基盤がとりわけ脆弱で、「余命幾ばくもない」と囁かれていたJR貨物(日本貨物鉄道株式会社)が、平成の終盤に息を吹き返した。
不動産事業など鉄道以外の収入で凌いできた同社。抜本的な経営改革に取り組み、2016年から本業の鉄道事業が黒字に転じたことで、連結経常利益は100億円を超えた。昨年度(2018年)こそ山陽本線で発生した天候災害で大きなダメージを受けたが、それでも連結経常黒字を確保できる見通しだ。
そんな好調の背景には、深刻化するトラックドライバーの減少や、二酸化炭素排出量の削減に取り組む顧客(荷主)企業の思惑もある。
急速に体力をつけて令和に乗り入れるJR貨物。その現状分析と展望を、真貝康一社長に語ってもらった。
「変えるをよし」の企業風土が自信をもたらした
――昨年7月に起きた西日本豪雨災害で山陽本線が不通となり、JR貨物は大打撃を受けながらも、経常黒字を達成する見通しです。
真貝 首都圏や関西圏と九州を結ぶ山陽本線の貨物列車は1日あたり往復54本が走っており、当社にとってまさに大動脈の路線。これが止まると1日あたり約1億円の売上がなくなります。昨年度の災害では、123億円の減収になりました。鉄道を利用していただいているお客様には大変ご迷惑をおかけし、災害対応の重要性を再認識した年でした。
鉄道事業全体の年間売上が約1400億円なので、1割弱を失ったことになり、ダメージは甚大です。それでも黒字にできる見通しであることは、これまでの社員全員での経営改革・業務改革・業務創造プロジェクトなどの取り組みにより、企業としての体力が付いてきたことを意味します。特に、「変えるをよし」という企業風土になってきたことが大きく、社員にとっても未来に向かっての大きな自信になると思います。