文春オンライン

黒字化達成 JR貨物・真貝康一社長が語る「西日本豪雨災害を乗り越えて」

JR貨物・真貝康一社長インタビュー #1

2019/04/24
note

貨物輸送の新提案・新幹線による鉄道輸送はどうか

――JR九州が九州新幹線の車両の空きスペースを利用した貨客混載列車の運行を模索するという話も出ています。

 真貝 新幹線の高速性を利用した貨物輸送を検証していくことは理解できます。新幹線を使ってまでの速達輸送への需要がどの程度あるのか、お客様にとってどの程度のリードタイムとプライスになるのか、事業性がどの程度あるのかなどが検証されるのだろうと思います。

©文藝春秋

――「リードタイム」という言葉が出ましたが、鉄道貨物の顧客には新幹線の速達性は馴染まない点もあるというお考えでしょうか。

ADVERTISEMENT

 真貝 お客様は、リードタイム、コスト、輸送ロット、更には物流におけるBCPなどを総合的に判断し、輸送する荷物についての輸送モードを選択します。新幹線による鉄道輸送がこれらの条件にどこまで合うのか、という問題で、お客様がどのように判断するかということだと思います。

総合的な輸送体系「モーダルコンビネーション」という概念

――環境問題の面から鉄道貨物が見直されるようになってきました。JR貨物のコンテナ輸送量は、2011年の1961万トンから2017年には2263万トンまで増加しています。今後も鉄道への「モーダルシフト(輸送手段の転換)」はさらに続くのでしょうか。

 真貝 環境問題については、単位当たりのCO2排出量が確かに鉄道貨物は圧倒的な強みを持っています。SDGsの取り組み等が企業に求められ、環境問題への対応も新しいステージに入ってきており、鉄道利用のニーズは高まっています。ただ、鉄道だけで貨物事業は成り立たないのも事実です。少なくとも出荷元から貨物駅までと、貨物駅から届け先までは、トラックが必要です。お客様には、鉄道+トラックでの商品をご提案しています。また、昨年の豪雨災害のような事態を見据えたとき、鉄道事業者だけでは解決できないことも明らかです。すべての輸送事業が手を組んで考えていく必要があるのです。

©文藝春秋

 物流において労働力不足や自然災害への対応が迫られている昨今、環境によりやさしいモードの選択という「モーダルシフト」という概念から、鉄道、トラック、船、航空機が、それぞれの特性を生かして、それらを組み合わせ、お客様にメリットのある商品をご提供できる総合的な輸送体系を整えていく「モーダルコンビネーション」という概念により重きをおいて考えていくことが重要だと思います。

 以前は、鉄道貨物が競争力を持つのは500km以上とされていましたが、今では300km前後での利用も増えている。とはいえ、100km以下となれば、これは小回りの利くトラックのほうが適しています。鉄道だけで完結するというものではないので、トラックや船を交えた様々な輸送手段を効果的に組み合わせていくことが、これからの時代には求められるのだろうと考えます。