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今年のバファローズは何かが違う 山本由伸と榊原翼に宿る希望の光

文春野球コラム ペナントレース2019

2019/05/11

 拝啓

 金子弌大さま。北の大地に転勤されてから、やはりご苦労の日々を過ごされているようですね。現在まで未だ古巣相手の1勝のみ、あなたの代名詞でもある奪三振も20と満足とは行かない数字でしょうか。やはりライオンズ打線に手を焼いておられるようで心中お察し致します。しかしあなたの事ですから、シーズンが進むに連れてみるみる防御率を下げて行くのでしょうね。夏場以降に強いあなたをよく存じ上げている身としては、どうぞ今年はゆっくりしておいて下さいと些かの心配をしております。無理せず10勝くらいで良いのではないでしょうか。且つ残りの9勝は古巣からではなく、どうぞホークスとライオンズ、そしてイーグルス相手に挙げて頂けるよう陰ながら応援しております。

 さて話は変わりますが、あなたの後進が日に日に逞しくなってきました。そう、山本由伸と榊原翼です。2人とも、もしライオンズの投手だったなら20勝は挙げるような勢いです。もちろんバファローズの選手なので10勝出来れば御の字ですが。まるで全盛期のあなたのような投手成績で、特にQS率が素晴らしいんです。2人共にQS率が83%を超えていますので、この2人の登板の日は3点取ればまず勝てる計算です。まだ2人で3勝しか挙げれていないのが不思議でなりません、いやチームの打撃成績に目を向ければ何も不思議では無かったですね……。

 ズバリ、そういう所まで全盛期のあなたにソックリです。そう、そういう所まで見事にあなたの抜けた穴をそのまま埋めてくれているような。どうです?楽しみでしょう?

 無駄な話で長くなりましたが、あなたの功績には大変感謝しておりますし、あなたの活躍もTVで毎回拝見しております。残りのシーズン、どうぞ遠慮なくホークスとライオンズ、そしてイーグルス戦で大活躍なさって下さいませ。

 敬具

9日の日本ハム戦で今季2勝目をマークした山本由伸

同い年コンビの山本由伸と榊原翼

 もはや2枚エースである。山本由伸と榊原翼。これほどまでに苦戦を強いられているバファローズの2019シーズンに於いて、やはり希望の光といえばこの2人、そして西浦颯大や中川圭太といった若き戦力達の活躍ではないだろうか。金子千尋(現・金子弌大)、西勇輝、中島宏之、小谷野栄一。球界を代表するような主力選手が大量に抜けた穴。そこに颯爽と登場し、見事にその穴を埋めたのがまだ20歳そこそこの若きバファローズ選手達、なんとよくできた話だろう。あまりに少年漫画的ではないか。

 山本はここまで防御率1.37。6試合に投げて自責点7はエースの投球と呼ぶにふさわしい。見ていてまさに「危なげ無い」ピッチングなのだ。しかも7回でも155キロ近い球速を維持しているのだから、地肩の強さが半端で無い。相手バッターが少し可哀想になるくらいである。有無を言わさず相手チームを1点勝負に引きずり込む彼のピッチングこそ、バファローズ野球を的確に形容しているのではないか。いや、貧打でも拙攻でもない、あくまでバファローズ野球である。惜しむらくは、昨年大車輪の活躍で終盤戦を守り抜いてきたセットアッパーが先発に再転向した事で、再度後ろが手薄になってしまった事くらいだろうか。そこは彼に求めても仕方がない事なので、後ろを任された投手陣に期待する事としよう。

 一方の榊原も実に素晴らしい。ローテーションの最後の1枠を勝ち取った育成出身の彼ながら、今となってはバファローズを牽引する一番「計算できる」投手である。ここまでの防御率2.09も実に素晴らしい数字だ。山本が「危なげない」のに対し、やや荒れ球気味で、且つ時折ボールが “うわずる” 彼の投球は実にスリリングである。毎回のようにランナーを出すも、それでも何とか凌いでしまうのも彼の風物詩と言えるだろう。帽子のうらに「そ・わ・か」と書いているという彼。なんでも「掃除」「笑い」「感謝」の頭文字で、「そ・わ・か」を大切にすると神様が味方してくれるとか。しかし悲願の初勝利を増井投手に帳消しにされたりと、あまりに悲運な展開も目立つ彼。大丈夫か? 「そ・わ・か」が足りていないんじゃないか? まぁ出したランナーを綺麗に掃除されるくらいならば、少々「そ・わ・か」が疎かなくらいで丁度良いのかもしれない。そう思う事にしよう。

ローテーションの最後の1枠を勝ち取った育成出身の榊原翼