筆者は今年の長いゴールデンウィークをとても楽しみにしていた。学期初めの疲れがたまった所で休みが取れ、大学に入学し家を出て行った娘も久々に帰って来る。よし、無理をしてでも今年のゴールデンウィークはスケジュールを開け、家族と共に過ごす事にしよう。

 しかし、現実はそれほど甘くはなかった。帰ってきた娘は連日の様に友達と遊びに行き、妻ももう一人の娘も自分と遊んでくれる気配はない。そうだ忘れてた。自分はこの家で唯一の男性であり、ただの50代に入った、しょぼくれた「オヤジ」に過ぎないのだ。

 父親なんてつまらない。仕方がないので、ふとツイッター上で呟いてみた。「明日は何をしようかな」。幸か不幸か自分のアカウントには3万5千人を超えるフォロワーが無駄についている。彼等もどうやら自分以上に暇らしく、どんな時でも相手をしてくれる。お前ら、本当にそんな事で大丈夫なのか、俺はいつも心配してるぞ。

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親子ゲームに「自転車で来い」

 そして、今回最初にとびついたのはこのアカウントだった。

 そうもはやオリックス名物、以前にこの文春野球コラムでも登場した、広報部プロジェクトマネージャーの花木聡さんである。翌日、5月2日に京セラドームで一軍、そして舞洲にある大阪シティ信用金庫スタジアム(以下、信金スタジアム)で二軍の試合があるので見に来いというのである。業界用語でこれを「親子ゲーム」というやつである。ところで花木さん、ファン一人一人にこうやって対応してるんですか。そもそもずっとツイッター見てませんか。それより何で、僕の球場間移動の交通機関まで、指定されてるんですか。

 とはいえ、実は他にいろいろ考えていた事もあったので、家族に相談してみる事にした。父親に対しては何の関心もない家族であるが、長年の教育の成果もあってちゃんとしたオリックスファンに育っているので、こういう時には話は早い。すると娘達曰く、「花木さんが来いって言う事は、要はゴールデンウィークでも、京セラの席余ってるっていう事やで」。なるほどお前達は賢い。確かに昨日行った淡路島では「淡路島バーガー」を食べるのに2時間半並んだけど、京セラドームなら並ぶ必要はきっとない。偉いぞ、待たずに座れる京セラドーム。じゃあ、行くか。

 だが調べて見ると問題が一つある。この日の「親子ゲーム」、京セラドームの試合開始が13時、信金スタジアムが17時。試合時間が3時間半なら移動時間は30分しかない計算になる。計算してみると両球場の距離は道のりにして11.9km。時速20kmで移動すれば30分少しだから、一見問題はないように思えなくもない。しかし、京セラドームは大阪都心にあり、周囲には信号も多く、気持ちよく自転車で走れる訳ではない。しかも、今季のオリックスはもはや「趣味なのか」というレベルで延長戦の多い球団である。さらに付け加えれば、信金スタジアムのある舞洲はバス移動も不便な場所にある。これ、普通に考えて信金スタジアムの試合開始時間に、間に合わんやろ。

 とはいえ、ツイッターで大々的に「自転車で来い」と言われた以上、サイクリストのはしくれとして、いかない訳にもいかない。もう一度計算してみると、自宅から野球場を二か所回って距離は60km足らず。一日に200kmを超えて走る事も多い自転車乗りとしては、距離的には朝飯前というべきレベルではある。まあ行けるやろ。うん。