短命に終わる、スター選手だった監督たち
大勢の選手たちに試合の準備をさせ、統率するのが監督やコーチ陣の責任だが、ほとんどすべての阪神の監督が、かつて阪神のスター選手だった過去を持つ。そういった意味で、阪神は日本野球機構の中でも、もっとも近親交配的な組織である、と言っていい。
それにもかかわらず――あるいはそれがゆえに――阪神では68年間で26回監督の交代があった。これはこの役職につく者の任期の短命さと、それにともなう裁量の欠如の明確な証拠である。日本のスポーツ界において阪神の監督という役職は、名誉はあるが不安定な役職なのだ。
まるで“ヘリコプターペアレンツ”のような親会社
阪神の監督にかかるプレッシャーの多くは、その上部にある大きく過干渉な組織によるものだ。チームを直接管理するのはフロントで、球団は阪神電鉄の子会社だ。
阪神電鉄が運営する私鉄は関西地域の大手私鉄中最短で、そのディスアドバンテージを埋め合わせるために輸送、小売、娯楽産業にも進出している。タイガースは阪神電鉄の収益事業ではなかったが企業の“顔”で、野球に関する経験も、専門知識も有さない者がほとんどの企業幹部たちにとって、この矛盾は心配の種だった。米国ではヘリコプターペアレンツ(※)を憂慮する風潮があるが、阪神の親会社とそのフロントは日本野球機構版・過干渉な親たちなのである。
※……子どもにつきまとい、子どもやその周囲の人間を監視する言動が目立つ過干渉な親
さわがしい甲子園と、そこに集うファンたち
阪神タイガースのスポーツワールドの重要な構成員には、甲子園に集うファンや、甲子園そのものも挙げられる。甲子園は日本でもっともドラマのあるスタジアムであるだけでなく、もっとも騒がしいスタジアムでもある。
阪神の試合観戦にやってくる米国人たちは観戦者の服装、掛け声、トランペット、横断幕、風船といった祝祭的雰囲気を演出する要素に心を奪われるが、同時にうるさい騒ぎが試合を“まともに”観戦する妨げになるとして嫌うことも多い。ただしこれは自己中心的な意見で、こうした意見を述べる者たちはおそらくヨーロッパのサッカーの試合や、米国のフットボールの試合にさえ足を運んだことがないのだろう!