文春オンライン

「與那嶺選手のことは快く思っていない」自転車女子競技の不可解すぎる五輪代表選考

本人は「公平な選考をしてほしい」とスポーツ仲裁機構に訴えた

2019/04/27
note

與那嶺選手が入賞したレースはなぜか選考対象から除外

「15位以内」という順位基準を満たす13位に入ったStrade Bianche大会に関しても、2019年のみ選考対象レースから外れている。

 JCFから出された「補足説明」によれば「東京五輪女子のコースは、獲得標高の大きなコースであるため、登りの強い選手を選考」したいという理由だ。しかし、Strade Biancheは、選考対象になっている全レースの中でも2番目の獲得標高を誇っているにもかかわらず、「平坦なレースである」との理由で選考対象レースから除外されている。このように、JCFの説明は明らかに論理的な矛盾をきたしており、到底合理性があるとは思われない。

©Yuki Sakamoto

「連盟の対応からは、選考基準をポイントではなく『順位』とすることで、與那嶺選手の欧州における選考基準達成を極力困難にして、事実上、全日本選手権での一発勝負の選考にしようとしているように考えられます。特定の1レースであれば、体調不良やメカトラブルにより、第一人者とはいえ與那嶺選手が負けることももちろんありうる。

ADVERTISEMENT

 一方で、男子については欧州で活動する選手たちをあからさまに優遇するものとなっています。たとえ彼らが全日本選手権で負ける、欠場したとしても、代表に選出されるように配慮したものとしか考えられません」(湯尻弁護士)

與那嶺の自転車のみ運ぶことを拒否

 では連盟はなぜ、これほど露骨な「與那嶺潰し」とも言えるような選考基準を設けたのだろうか。大きな理由のひとつと考えられるのが、2016年のリオ五輪の選考に関わるゴタゴタだ。

2016年夏に開催されたリオ五輪 ©JMPA

 当時、JCFは與那嶺が2016年1月に開催されたアジア自転車競技選手権で日本チームの指示や方針に従わなかったとして「リオ五輪代表選考から與那嶺を外す」との処分を下した。だが、これに対し與那嶺は「方針には違反していない」として、処分の取り消しを求めた。結果として、スポーツ仲裁機構はJCFの判定に根拠はなく「処分は取り消されるべきだ」と認定した。その後、選考会で與那嶺は優勝。そのままリオ五輪の代表に選ばれ、本番でも日本選手では男女を通じて過去最高順位となる17位に食い込んでいる。

「連盟側からすれば自分たちの出した処分を公にひっくり返されたわけで、顔に泥を塗られたという想いもあるのでしょう。そのことが原因かは定かではありませんが、それ以降何かにつけて與那嶺に対して不当な扱いを続けています」(湯尻弁護士)

 一例を挙げれば、2016年の世界選手権では代表選手中、與那嶺の自転車についてのみJCFが運ぶことを拒否。「運搬費用は出すから自分で運ぶように」と言ったものの、現在においても精算されていない。