「日本自転車競技連盟(JCF)が昨年9月に発表した東京五輪の女子自転車ロードレースの代表選考基準については、公正さを欠いていると言わざるを得ません。私はJCFに対して男子と同じチャンスをすべての女子選手に与えた上で、男女とも差別なく、公正に選考を行うよう強く主張をしていました。でも、JCFは一向に判断を変えない。なので、代理人を通して日本スポーツ仲裁機構の判断をいただくこととなりました」
こう語るのは、自他ともに認める女子自転車競技の日本第一人者、與那嶺恵理(アレ・チポッリーニ所属)選手だ。
東京五輪の最有力候補と言っていい選手だが……
與那嶺は全日本選手権ロードを3連覇中で、マウンテンバイクでも日本タイトルを獲得している。現在はオランダを拠点に欧州のチームに所属して、ワールドツアーでしのぎを削っている。欧州を舞台に戦っている女子日本人選手は與那嶺ひとりであり、その実力は国内では抜きんでている。順当ならば来年の東京五輪の最有力候補と言っていい選手がなぜ、このタイミングでスポーツ仲裁機構に訴え出る必要があったのだろうか。
與那嶺の代理人を務める湯尻淳也弁護士はこう説明する。
「JCFが定めた東京五輪に向けた女子選手の選考基準が、明らかに與那嶺選手を狙って、代表から排除しようという意図を感じるものだからです」
男子は欧州で戦っている選手が有利
どういうことか。
「昨年9月に発表された東京五輪の選考基準のうち、男子ロードレースについては、UCI(自転車競技の国際的統括団体)ポイントの多寡により代表を選考する方法を採用しています。そして、欧州のワールドツアーレースなどでは、獲得したポイントに最大で10倍の係数を乗じることとしています。
ワールドツアーレースにおけるUCIポイントは、男子は60位以内の順位に入ると獲得できます。その反面、全日本選手権におけるUCIポイントの係数は0.5倍と非常に低く設定されており、要するに男子においてはワールドツアーで獲得するポイントを得ることで非常に有利な判定を受け、全日本選手権における逆転は非常に困難な内容となっているのです」
現在、日本人選手では新城幸也と別府史之の2人が男子ワールドツアーに参戦している。つまり、男子の選考基準は、欧州で戦っているこの2選手に非常に有利なものになっているわけだ。