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「2020年を新憲法施行の年にしたい気持ちに変わりはない」新元号を強調、安倍首相の思惑とは

改元にあわせ「#自民党2019」も話題に

2019/05/09
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「憲法9条の条文は削らないまま単純に自衛隊の存在を書き足したら、場合によっては残った現在の条項は失効する恐れがあるのです。戦争放棄をうたった1項と、戦力不保持を定めた2項です」

「そういう認識をきちんと共有しないまま提起されている今回の改憲論は『政治的な主張』と呼べるレベルのものではありません。フェイク(虚偽)です」

 樋口氏と同様の指摘は、憲法に詳しい弁護士の伊藤真氏も行っている(幻冬舎plus 5月3日)。

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天野喜孝氏が描いた安倍首相のイラストが話題に

甘利明 自民党・選対委員長
「新時代にふさわしい、『新しい政治』の幕開け。『
#自民党2019』プロジェクトスタート」
ツイッターより 5月1日


 もう一つ、改元にあわせて話題になったのが「#自民党2019」というプロジェクトだ。ソーシャルメディアを活用し、映像やファッションを通じた発信で若者を引きつけようとするもので、イラストレーターの天野喜孝氏が描いた侍のイラストに「第二十一代・第二十五代 自由民主党総裁 安倍晋三」と書かれていたことも話題になった。プロジェクトリーダーは甘利明選対委員長。

 改元の騒ぎに乗じて、合意を得られやすそうな「自衛隊明記」のみを語り、ほかの「緊急事態条項」などには触れず、さらに「加憲」の正しい説明もしないまま、憲法改正に進もうとしているのが安倍首相らの思惑のようだ。

橋下徹 元大阪市長
「安倍首相が実現したいと強く願っている憲法改正に協力するための行動を起こすべきだ」

産経新聞 5月3日

橋下徹氏 ©文藝春秋

 憲法改正について、別の思惑も動いている。日本維新の会の創設者である橋下徹元大阪市長は、維新が2025年大阪・関西万博の誘致で安倍政権の協力を得てきたことに対し、憲法改正に協力すべきだと訴えた。橋下氏は公明党が憲法改正の妨げになっていると指摘し、「首相に匹敵する改憲論者」だとする松井一郎大阪市長が「ダブル選の勢いに乗じて、公明を潰しにいくことを考えている」と語った。

 橋下氏は、維新が目指す「大阪都構想」に公明が賛成すれば、対立する理由は消滅すると揺さぶり、菅義偉官房長官が「ポスト安倍」の候補になっていることを「大阪にとっては大ハッピーな話」と諸手を挙げて歓迎してみせた。橋下氏は改憲を維新のためにどこまでも利用する腹だ。

「2020年を新憲法施行の年にしたい気持ちに変わりはない」新元号を強調、安倍首相の思惑とは

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