最近、日本では移民関連の議論が活発だ。この原稿を書いている私の机の上にも、安田浩一『団地と移民』(KADOKAWA)、望月優大『ふたつの日本』(講談社現代新書)、出井康博『移民クライシス』(角川新書)などなど、今年の春に立て続けに出版された移民問題関連の好著が積まれている。

 日本はいまや146万人の外国人労働者を抱える移民国家だ。だが、政府は建前上では「移民」の存在を認めず、単純労働への従事のみを目的にした外国人の滞在資格もながらく認めてこなかった。ゆえに多くの外国人は技能実習生や(偽装)留学生の立場で働いてきたが、矛盾多き制度のもとで数多くの問題が生じている。

厚労省の調査で2018年10月末時点で外国人労働者の数は146万人と6年連続で過去最高を更新している ©iStock.com

在日外国人が持つ「純粋な弱者」以外の側面とは?

 例えば技能実習生への搾取構造と人権侵害は深刻だ。偽装留学生が多いのも、社会が単純労働者を必要としているにもかかわらず受け入れ制度の整備が不十分だからだ。今年4月に新設された特定技能ビザ(事実上の労働ビザ)も、問題の多い技能実習制度を強化する側面を持つ。加えてこのビザで来日する外国人労働力をさっそく原発に送り込む動きもある……。

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 在日外国人問題を調べれば調べるほど、日本の移民政策の不備や不作為が垣間見えてうんざりする。日本はこの問題に関しては、様々な面で実にろくでもないのだ。加えて在日外国人を対象にしたヘイトスピーチや陰謀論も、ネット上ではかなりの存在感を持っている。

 とはいえ、日本の政策が「ろくでもない」ものだとしても、在日外国人の弱者性や被害者性だけを強調して、彼らを純粋で清らかな存在として扱うような論調も私はあまり好きではない。なぜなら、彼らの母国ではごく当然なのかもしれない行動が、現代の日本(もしくは先進国)の道徳基準では到底容認できないといったケースもまた、文化の摩擦として起こり得るからである。

 その代表的な一例が児童虐待である。本稿では筆者が体験した事例と、それに伴う煩悶についてご紹介したい。