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「移民の体罰」という難題――子どもを叩く“在日外国人の育児”にどう向き合うか

2019/05/13
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児相からの電話「母親が叱りすぎたようだ」

 だが、そうした文化的事情は理解しても、ここは21世紀の日本だ。しかも、隣家の中国人母子は、日本語で日常生活を送っており、今後も長く日本社会で暮らしていくであろうと見られる。本人たちのためにも日本社会のNG事項は知らせておいたほうがいい。母親もある程度は日本語ができるので、それを理解できる可能性はあるように思われる。

 私はかなり悩んだのだが、金切り声と殴打が聞こえる夜が5~6回目を迎えたある日、児童相談所全国共通ダイヤル(189番)に電話することにした。

 児童相談所は相談を受けると、職員が家庭訪問などをおこなう。このときは、数日後に児相職員から私に折り返し電話があり「母親は叱りすぎて叩いたと言っている」「子ども本人は家にいたい(=保護の必要はない)と言っている」と説明があった。

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 だが、その後も飛田給の仕事場では、以前よりも頻度は減ったものの、1ヶ月~数ヶ月に1回ぐらいは殴打音が聞こえた。とはいえ何度も児相に電話する行為は、私の側がかえってクレーマー隣人のように見えはしないかと思い気が引ける。かと言って子どもが殴られる音は聞きたくない。実に悩ましかったのを覚えている。

隣室のベトナム人夫婦の殴打音

 その後、私は豊島区に仕事場を移したが、ここでも別の問題が生じた。最初に隣室に住んでいたのは3~4人の若いベトナム人女性たちだったが(ずっとアルバイトをしているらしく、ほとんど帰宅しなかった)、今年5月ごろにいきなり入居者が変わった。同じくベトナム人の若い夫婦と2歳くらいの男の子が暮らすようになったのだ。

 引っ越しや室内クリーニングがおこなわれた形跡がないのに、わずか10日ほどで住民構成が入れ替わったのが不思議だったが、彼らは日本語も英語もほとんど通じないので詳しいことはわからない(全体的な傾向として、在日ベトナム人は在日中国人と比べて日本語が上手ではない人が多い)。ちなみに在日ベトナム人はここ数年で急増していて、2018年末時点で前年比26.1%増の約33万人に達している。

ここ5年でベトナム人労働者は9倍に増加。2018年末時点で約33万人に ©共同通信社

 そして、このベトナム人の若い夫婦もやはり、子どもを激しく叱責して叩くのである。頻度はかなり高く、数日に1回は殴打音や子どもの泣き声が聞こえてくる。たまに音が違うので、テーブルや流し台をガンガン叩き、叱責をおこなっていることもあるようだ。