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飯能から西武秩父へ、まるで山岳路線

 飯能を出発すると左から八高線の線路が並び東飯能駅。もちろん「ちちぶ号」は通過し、さらに左へカーブ。しばらく走ると線路が分岐してどんどん増える。武蔵丘車両基地だ。その入り口には北飯能信号場というすれ違い設備があり、「ちちぶ号」が対向列車の通過を待つ場合もある。

 かつてここには天覧山駅があった。1931年に設置され、第二次世界大戦末期に休止、そのまま廃止された。ちなみに天覧山は旧天覧山駅の南西にある。しかし、遠くから見える目印がないため車窓からはわかりにくい。名前は明治天皇がこの山から軍事演習を統監したことに由来するそうだ。

 武蔵丘車両基地を通り過ぎると「ちちぶ号」は大きく左へ曲がり、高麗(こま)駅を通過して谷に突入する。眼下に見える川は高麗川。下流はJR八高線とJR川越線の接点、高麗川駅付近を経て、最終的には荒川に合流する。

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谷側からの風景も車窓からよく見える

 ここからしばらく渓谷の風景を楽しめるけれども、武蔵横手駅を通過するときは車窓左手の線路際に注目。運が良ければ白ヤギの「みどり」が草を食む様子が見える。雑草を刈るために西武鉄道が飼っているヤギだ。エンジン付きの機械で草刈りをするよりも、二酸化炭素排出量を小さくできるという。

車窓が写真には収まらない理由

 ここから先は山と谷と川、緑の森と野生の花咲く風景が続く。線路と高麗川は何度も交差する。Laviewの大きな窓は膝元あたりまで下にあるから、鉄橋を渡るたびに川面が見える。これがLaviewの車窓の楽しさだ。しかし、下ばかり見てはいけない。山の稜線も美しく、緑の山肌に、春はヤマザクラ、初夏はヤマフジなどを見つけられる。日本の人里近くの山は伐採され杉林になってしまったけれど、野生の花が咲くあたり、自然のままの風景と言えそうだ。

 谷底を眺めたり、山を見上げたりと忙しい。進行方向を見れば、大きな窓で両方をとらえられる。この景色はデジカメやスマホの写真では収まらない。ここに来なければ、そしてLaviewに乗らなければ見られない景色だ。写真はあきらめて、しっかり観て記憶に残そう。

 ちなみに、途中で通過する吾野駅が池袋線の終点だ。そこから西武秩父駅までが西武秩父線となる。1969年に開業した路線で、開業と同時に特急「レッドアロー」が走り始めた。現在は廃止されたけれど、貨物輸送も行われ、鉱山からのセメント輸送、鉱山への燃料輸送に電気機関車や貨車が活躍した。