単線区間では対向列車を待つために停まる
飯能から西武秩父まではほとんど単線だから、すれ違いのための駅がある。対向列車を待たせて通過し、逆に、通過扱いの駅でも対向列車を待つために停まる。正丸駅もそんな駅のひとつ。正丸駅を出るとすぐに長いトンネルに入る。長さ約4.8km。1969年の開業当時は私鉄でもっとも長いトンネルだった。俊足のLaviewも通過には3分半ほどかかる。トイレに行くチャンスだ。鉄道の設備に興味があるなら、途中に設けられたすれ違い設備「正丸トンネル信号場」に注目。闇の中で列車のすれ違いがあるかもしれない。
正丸トンネルを過ぎると、またいくつか短いトンネルを通り、景色が開けたら車窓左手に武甲山が見える。石灰石など鉱山資源を産出する山で、削り取られて階段状になった山肌が特徴的。一部は植林によって緑化されているという。
横瀬駅に停車直前、左の車窓に線路がたくさん並んでいる。ここは横瀬車両基地。車庫というより、古い車両の解体処分や保存車両の保管場所として使われている。白いカバーがかかった車両たちが保存車両だ。秋に保存車両を公開するイベントが行われる。西武鉄道は自社の博物館を持たないけれど、年に1度、主要な車両基地を公開し見学させてくれる。
6月10日からは乗車チャンスがグッと増える
横瀬駅を発車すると最後のトンネルに入る。このトンネルの上が芝桜で有名な羊山公園だ。トンネルを出るとゆるい右カーブで街並みを見渡し、西武秩父駅に到着する。その直前に左から秩父鉄道の線路が近づき、分岐してこちらの線路に合流する。その逆もある。西武鉄道の列車の一部が、この線路を使って秩父鉄道に直通している。しかし直通列車の運行本数は少ない。西武秩父駅から秩父鉄道御花畑駅へ、徒歩数分で乗り換えられる。
西武秩父駅に着いたら、秩父鉄道に乗り継いでも、羊山公園を散策しても良し。西武秩父駅に隣接した日帰り温泉施設「西武秩父駅前温泉 祭の湯」もオススメ。お土産品の品数も多く、買い物も楽しい。
現在、Laviewは池袋線の特急「ちちぶ」「むさし」として、平日は上下11本、土曜休日は上下10本の運行だ。1編成が稼働して、1編成が予備。最近、さらに1編成が追加された。2019年6月10日からは2編成が稼働して、平日は上下17本、土曜休日は上下16本になる。乗車チャンスがグッと増える。ぜひ、このコラムで予習して乗りに行こう。
写真=杉山淳一/文藝春秋