愚痴は言いつつ意外とハッピーな高齢者の暮らし
つまり、高齢化問題だ、独居老人だという話をすると、みんな老老介護や寝たきり老人の想像をするんですけど、実際には高齢者は高齢者なりに人生を楽しんでいる部分もあるのでしょう。例えば、一人暮らしをしている高齢者に「お前ら幸福ですか?」というアンケートを取ってみると、実は男女平均で6.59点(10点満点、内閣府『2015年版高齢社会白書』)というまずまずハイアベレージな状況があります。何だよ、そこそこ楽しそうじゃねえか。
ある社会福祉法人でやはり高齢者450人に「いま足りないものは何ですか」とアンケートを取ってみると、ダントツトップが「健康」で、次いで「金」「治安」「伴侶や親しい友人の健康」「災害のない安心感」などが続きます。たまに「愛人」(80代男性)とか「子供の産める年齢の女性」(80代男性)などと回答してくる馬鹿もいます。いい歳してつまらねえこと言ってねえで早く死ねと思ったりもしますが、裏を返せば病気さえしなければ日本の高齢者ライフは貧しいながらもまずまず恵まれた環境です。もちろん、生活上の不便や不安や愚痴はありながらものんびり暮らしているのでしょう。
子供と同居して暮らしている世帯では、確かに世帯分類上は“家族あり”になっているものの、子供が日中働きに出ていたり、子供夫婦が介護に熱心でなかったり、子育てその他に忙殺されていると事実上高齢者が日中独居状態になってしまうことがあります。また、見落とされがちですが夫婦で長年暮らしているのに夫か妻に先立たれてしまい独居老人になるケースも多数あるわけです。夫婦で静かに暮らしていた家庭が、どちらかの逝去でフッと一人暮らしになってしまうことの辛さは、想像に余りあります。かつて「千の風になって」(英題:”Do not stand at my grave and weep”)が日本でも流行し、長らく共感を呼んだのも、人がこの世を生き抜くことと、去ることの宿命を、その出会いから苦難を経て半世紀近く経って受け入れることのむつかしさを感じさせます。
私も家内に先立たれたら、不安と哀しみで死んじゃいそうです。統計でも、妻に死なれた夫の平均寿命はより短くなることが分かっていますが、逆に夫が亡くなったあと妻は意外と大丈夫だったりするんですよね。やっぱりおっさんは立場上弱い。弱すぎるよ。