6月6日は「梅の日」。和歌山県みなべ町や生産者団体で作る「紀州梅の会」が提唱し、日本記念日協会が認定した。
梅の生産量は和歌山県が日本一だ。2018年には全国の65%を占めた。2位の群馬県は10分の1以下なので、ダントツの産地である。市町村別では、みなべ町が1位で全国の30%を生産する。
その日本一の産地が、故事にちなんで制定したのが「梅の日」だ。1545年6月6日、時の天皇が京都の賀茂神社に梅を献上したところ、恵みの雨が降り出した。人々はこれを「梅雨」と呼んだという。
この20年で1世帯あたりの消費量は4分の3ほどに
「町内の小中学生は毎年6月6日、自分でおにぎりを作って給食で食べます」。みなべ町役場のうめ課、田中一朗課長(59)が説明する。
日本一の産地だけに、町役場には全国唯一の「うめ課」がある。全国初の「梅干しおにぎり条例」も制定しており、梅の日には町内で一斉に梅干しを食べる。
梅にまつわる故事と言えば、大宰府(福岡県太宰府市)で催された「梅の宴」の歌が万葉集に収録され、この詞書が「令和」の典拠になったのを思い出す。太宰府には観光客が殺到し、書店では万葉集が売り切れた。だが、みなべ町では「何かイベントでもやるんですかと問い合わせてくれるのはマスコミさんだけ」(田中課長)という状態で、梅干しの出荷にも影響がないという。
梅干しの1世帯当たりの消費量は、この20年間で4分の3ほどに落ち、食卓に並ばない家庭が増えた。令和になっても町がスルーされるのは、「梅離れ」が原因なのだろうか。実は、みなべ町内ですら小中学生の保護者の2割が梅干しを「全く食べない」ことが農業団体のアンケート調査で判明している。だからこそ「梅干しおにぎり条例」を定めたのが実情だ。
ただし、みなべ町が日本一になるまでには、不思議な梅の物語と、他の追随を許さない「本気」があった。