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薬を飲み続けて4か月で治まった症状だが……

 前立腺とは膀胱に接して尿道を取り囲むように存在する男性特有の生殖器官。精巣で作られた精子を保護する前立腺液を分泌し、これによって精液が完成する。「栗の実」に似た形で、「クルミ大」が一般的なサイズだが、40歳を過ぎる頃から徐々に大きくなっていくことが多い(前立腺肥大症)。Kさんの前立腺が「年相応の肥大」とされたのもそのためだ。

 彼が処方された薬は「セルニルトン」という生薬系の薬。これを1回2錠、1日3回飲むように言われた。また、「ロキソニン」(非ステロイド系抗炎症鎮痛薬)も処方されたが、こちらは「痛みが強い時だけ飲むように」と指示されていた。

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 Kさんは医師の言いつけを守り、月に1度の受診も続けていた。

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 薬を飲み始めてからも症状は「出たり出なかったり」を繰り返していたが、次第に「出ない」ことのほうが多くなってきた。服用から4カ月が経過するころには、「ほぼ出ない」という状況にまで改善していた。その間ロキソニンを飲むことは一度もなかった。

 初診から半年が過ぎた泌尿器科受診日――。

「具合はいかがですか」

「おかげさまで、ほとんど痛みを感じることはなくなりました」

「よかったですね。ということは、当初申し上げた通り『慢性前立腺炎』である可能性が高いということになります」

"とりあえずの診断"から確定する『慢性前立腺炎』とは

 症状が消えたことで診断が確定する――。そんなことってあるのだろうか。

「あります」

 と即答するのは、東海大学医学部付属病院泌尿器科准教授の小路直医師。詳しく解説してもらおう。

小路直医師

「Kさんの陰部痛は主治医の診立て通り、慢性前立腺炎による症状だったものと思われます。ただ、この病気は検査結果だけで特定することが非常に難しい場合があるのです」

 小路医師によると、慢性前立腺炎にはクラミジアなどの細菌に感染して起きるものと非感染性のものとがあり、検査で感染症ではないことが分かった時は、まず内服薬を使ってみて、効果が出るようなら慢性前立腺炎である――という「後ろ向きの診断」をすることがあるというのだ。

 しかもセルニルトンは決して強い作用の薬ではないので、効果が表れるのに数カ月かかることも多い。「気が付いたら治っていた」というのが典型的なケースなのだ。