七崎 亮介君もだけど、メディアに出てるかどうか関係なく、そういうことって多いんですよ。エッセイにも登場した、中学時代にちょっとだけ付き合った「ケンジ」も、最近、女性から男性への性適合手術をしたんだけれども、そのことで働いていた会社を辞めざるを得なくなってしまったし。
亮介 寛容というよりは、臭いものに蓋という感覚なんじゃないか、と。そういう風潮が少しずつ変わっていけばと思います。
七崎さんの今後は?
七崎 LGBTQをめぐる状況って地方によって本当に違うので、本の出版を契機に、全国に出かけて、当事者や支援者の輪を広げられたらと思ってます。
亮介 この本で地方にいる人たちにメッセージを送れるのはとてもいいことだよね。僕たちがいまがんばっているLGBTコミュニティ江戸川での活動の枠を超えて、全国の人たちともつながれたらいいですね。
七崎 それと……、この本には2人が結婚してから4年間のことは、ほとんど書いていないので、それもいつか書いてみたいなぁ、と。ゲイの夫夫も男女の夫婦と同じように、笑ったり悩んだり、ときには喧嘩しながらも、ふたりでいろんなことを乗り越えながら、支えあって過ごしていることをみなさんにお伝えしてみたいです。
亮介 確かに色々なことがあって、濃い4年間だったけど、うーん……、七崎が何を書くか、ハラハラする部分はあります(笑)。
―― では最後に、本について、一言。
七崎 文春オンラインの連載を読んでくださった方はおわかりだと思いますが、僕は今回自分が経験したことを、汚いことや、地べたを這って泥だらけみたいな話も含めて、包み隠さず、ちゃんとこの本に書きました。きれいごとだけを書いても、人には届かない、と思ったからです。
読んでいただいて、批判が出ることも覚悟しています。「こいつみたいになりたくないな」と思ってくれてもいいんです。でも、この本に書いたことが一つの基準というか、道しるべになって、いろいろ考えていただけたらいいし、「自分はこうしよう」と思ってくれたらとても嬉しいな、と思っています。
亮介 七崎の本を、どうぞよろしくお願いいたします(ペコリ)。
写真=平松市聖/文藝春秋