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米中対立の新しい冷戦でまた右往左往する日本という素晴らしい令和時代がやってきました

なんだろう、この「令和の時代」が迎えるハードモード。

2019/05/25

米中冷戦で日本もまた主戦場となる恐れがある

 同様の図式は、「ひとつの中国」に抗う台湾、異民族問題の先鋒となるチベット自治区、新疆ウイグル自治区、あるいはモンゴルにまで及びます。これらは中国の中核的利益であり、問題に直接触れることは中国に対する「内政干渉」であるという建前とともに置き去りにされてきましたが、そこで起きていることは重大な人権侵害であるように、アメリカ、日本などの民主主義陣営からは見えます。

 じゃあアメリカは完璧なのかと問われると、やはり理想からは程遠いわけですけど、貧しい人たちのために戦う人がおり、貧しい人にも選挙権が与えられ、声があげられるという一点で中国よりもマシであろうと思います。それが民主主義であることは日本人がよく知っています。街角で「アベちゃんバーカ」と言って逮捕されない国であって欲しいなら、民主主義を堅持し、アメリカと共に歩む以外の選択肢はありません。

コラム:中国ウイグル族を苦しめる現代版「悪夢の監視社会」
https://jp.reuters.com/article/apps-china-idJPKCN1IN02T

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 曲がりなりにもきちんとした民主主義を続けてきた日本が、これらの人権問題について見て見ぬフリをし、中国の台頭を仕方のないことだとしたうえで貿易相手として互恵的な関係を築いてきました。ただ、昨今の米中対立の局面が暗示するように、新たなる冷戦、両大国同士の対立という図式が「令和の常識」となっていくのならば、アメリカと緊密な関係を持ちアジアの民主主義陣営としての日本が取るべき責任は大きくならざるを得ません。衰退しているのに。

 米ソ冷戦のころは、もちろん極東・東アジアの日本も含まれていましたが、主たる安全保障体制の課題はヨーロッパが舞台となっていました。今回の新たな冷戦は、もろに中国と隣接している日本もまた主戦場となる恐れがあることは、誰もが知っていることでしょう。

©iStock.com

私たちがどう令和で生き抜くか

 そして、一帯一路の対外的経済政策を元に、アジアやアフリカ、中東のあまり裕福ではない国々に貸金を出し、インフラを整えるもののカネを返せないこれらの国々からインフラごと中国が接収してしまう、といういささか古い植民地主義・重商主義のようなアプローチを中国がとるほど、低下するのは日本の影響力です。経常収支が黒字であることが命綱である日本にとって、世界経済における地位が低下することは、本来ならば死守しなければならない砦を自ら明け渡している行為にほかならないのです。

 ただ、なにぶんトランプ大統領は変わった人なので、我らが安倍晋三総理がべったりとトランプさんを歓迎し、外交の基軸をアメリカとの共同歩調に置き続けて本当に大丈夫なのか、という懸念は残ります。なんかこう、凄く心配なのです。なんですかね、この物凄い不安感は。

 日本としては、絶対的に平和を維持する勢力として頑張りつつ、衰退する国力を制度の改変でうまくコントロールしながら、米中対立という新しい冷戦構造のなかで中国の隣国なのにアメリカ側のパートナーとして民主主義陣営を堅持し、世界的な日本の威信を守り、次の世代へ信頼される日本を引き継いでいく――そういう曲芸のようなことを完遂しなければならないのです。

 なんだろう、この「令和の時代」が迎えるハードモード。

 ほんと、ガチで大変な状況であることを踏まえたうえで、私たちがどう令和を生き抜くかを考えていかなければならないわけですね。そんななかで、参院選は衆議院解散とセットでダブル選、とか言われていますけど、本当に私たちは大丈夫なんでしょうか。ねえ。ねえ。

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米中対立の新しい冷戦でまた右往左往する日本という素晴らしい令和時代がやってきました

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