一昨年、安倍政権から「人生100年時代」構想とかいうテーマが突然掲げられ、あまりのことに私は呆然としておりました。戦前ならいざしらず、なんで政府に国民が生き方の規範を示されねばならんのか。いろいろしんどい。どこから考えを紡いでいけば良いのでしょう。
人生100年時代構想(首相官邸ホームページ)
https://www.kantei.go.jp/jp/headline/ichiokusoukatsuyaku/jinsei100.html
「人生100年時代」に向けて(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000207430.html
年金の仕組みはもう成り立たない
その出だしからして「ある海外の研究では、2007年に日本で生まれた子供の半数が107歳より長く生きると推計」とされ、これは『ライフ・シフト』(リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット著)という売れた本の一節なわけですけど、つまりはお前らがよろしければ80歳ぐらいまで働けって話なんですよね。そ、そうっすね。で、「働いてるなら年金とか別に要らねえんだろ?」という流れになる。むしろ、ジジイでも所得があるなら税金払えよってことで、さすがは我らがアベちゃん、国民のケツへのムチの入れ方をよく分かっていらっしゃる。
しかも、本当の主眼は年寄りが増えることによる社会保障費の激増は、結構ヤバいレベルで問題を各所に起こすので、年寄りだから敬ってリタイアしたら年金をくれてやる、という仕組みはもう成り立たないんですよ、という政策転換の意図が見えておるわけです。
だけど、社会保障政策として「あ、カネ足んねえので年金ごっそり削りますわ(笑)」とかやると老人がムカついて選挙に落ちる政治家が出かねないので、そうとは言わずに労働政策として「いや、働き方改革でござい」と80歳ぐらいまで働けという見せ方をするのはうまいなあと感心します。ついでに、所得のある高齢者は厚生年金を70歳まで払えや、という厚生労働省様のご検討内容も報じられました。経済的に余裕があるなら年金もらうんじゃなくて納付しろやジジイという政府の熱い思いを真正面から受け取りましたぜ。やはり世の中こうでなければなりません。
「年金で暮らせるかどうか分からないので、将来の備えに」と不動産や証券投資を頑張って不動産収入や配当が入るようになると「なんだ、お前ら楽に暮らしてるじゃねえか。じゃあ年金は無しだ。むしろ納付しろ。分かったな」と言われてしまうという、ある意味で村を焼かれるより辛い世紀末がやってきてしまうのでしょうか。凄すぎる。
さすがに誤魔化し方にも年季が入ってるなあと。100年生きるんだから、みんないつまでも現役で働いてくれよな、と新しいスローガンを打ち出しておいて、働いているんだから所得があるし現役だし年金要らないでしょハッハッハって奴です。
長生きしているからずーっと健康、という前提
分かっちゃいるけど、ある種の国家的詐欺みたいなもんじゃないですか。そういう議論を平然とやってのける、我らが安倍晋三さんという宰相の、凄さとヤバさはここにあると思います。
確かに『ライフ・シフト』が説くように、人生が長くなっているんだから働く期間も伸びるし、働き方も多様でいいんじゃない? と言われるとまあその通りではあるんです。でも政策を決めている人たちもさあ、介護の現場とか高齢者の実情とかあんまり分かってないまま、長生きしているからずーっと健康、という前提で話を決めてないかい? という話を介護の専門サイトに寄せたところ、当事者である高齢者や、介護に携わっている人たちからたくさんの反響を頂戴しました。当たり前ですよね、歳を取って身体が動かなくなっているからリタイアして介護を受けたり施設に入ったりしている人たちなんですから。
経済成長する前提で対策なんかしてるから「2025年問題」はもう手遅れに…。右肩下がりの経済で、高齢者が増え続ける「人生100時代」の生き方とは!?
https://www.minnanokaigo.com/news/yamamoto/lesson30/