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首脳外交を支えてきた“歓迎ソング”の知られざる世界――「トランプ・ソング」を作るのはあの国?

ゲッベルスは「松岡を日本音楽で迎えよ」

2019/05/30
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北朝鮮が「トランプ歓迎ソング」を作る日

 社会主義国も熱烈な歓迎では人後に落ちない。ここは、「音楽政治」という言葉さえあった、北朝鮮にお出ましを願おう。

 1971年6月、ルーマニアのチャウシェスク大統領が平壌を訪れた。このとき、「歓迎チャウシェスク、歓迎チャウシェスク」と繰り返す歌が作られた。指導者を絶対視する北朝鮮では、外国首脳の名前を含む歌自体がきわめて珍しい。それだけに、同国の歓迎ぶりがよくわかる。

ブカレストの墓地にあるチャウシェスク元大統領の墓石 ©ロイター=共同

 同じような例を探していくと、「われらの親善永遠なれ」という歌に行き当たる。こちらは2000年代初頭にロシアとの友好親善を記念して作られたもので、「金正日、プーチン。プーチン、金正日」と両国首脳の名前が繰り返される。動画サイトなどで簡単に聞けるが、なかなかシュールな代物である。

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北朝鮮の朝鮮労働党創建65周年を記念して行われた軍事パレードを観閲し、拍手する金正恩氏(右)と退席する金正日総書記(当時) ©共同通信社

 金日成時代のチャウシェスク。金正日時代のプーチン。では、金正恩時代は――。

 もし米朝関係が改善し、トランプが平壌を訪れるならば、「トランプ歓迎ソング」が作られるかもしれない。つい最近まで「死を米帝侵略者どもに」と歌っていた国の変わりよう。見たいような、見たくないような、奇観ではないか。