中間選挙ではヒジャブをまとった元ソマリア難民が当選
選挙戦期間も含めると3年間にわたるトランプの言動への反発がリベラルの間で高まり、昨年11月の中間選挙では、今や時代の寵児となっている “AOC” ことアレクサンドリア・オカシオ=コルテス(下院議員)、ヒジャブをまとった元ソマリア難民のイルハン・オマル(下院議員)など、大量の女性、人種民族/宗教マイノリティが当選した。この流れが2020大統領選にも続くのではないかと思われた。これが「白人男性候補は不利?」発言につながったのだった。
ただし、3月から5月にかけて今度は白人男性が続々と出馬表明し、現時点での立候補者数は史上最多の24名となっている。
出馬表明ビデオにみる候補者の「属性」
ほぼ全ての候補者が、立候補表明に際してビデオを作っている。多くは3分程度で、自分自身と主だった政策の紹介になっている。いわば有権者への挨拶状だ。大統領選は有権者との心情的な繋がりも非常に重要となる。有権者は自分自身を反映する、親しみの持てる候補者を支援するからだ。したがってビデオで語られる政策はあくまで概要であり、候補者自身の「属性」――人種、ジェンダー、生い立ち、家族や故郷など――をフィーチャーした上で、支援者との交流を描くパターンが多い。
●黒人
アフリカン・アメリカンのコーリー・ブッカー(上院議員)のビデオは、黒人色を前面に押し出している。ドラムラインのビートをBGMに、通りで支持者に「ワサップ!」と声を掛けるシーンから始まり、両親と幼い自分の白黒写真、1960年代の公民権運動の映像を使い、アメリカ黒人の苦難と、白人の支援もあっての上昇の歴史を語る。
後半は広大な農業州の風景にパンしてあらゆる属性の人々を映し、司法改革、移民問題にも触れている。自分と同じ黒人有権者と、全アメリカ人の両方に訴えかける構成だ。支援者にカジュアルに「エーメン!」と応えるシーンは、敬虔なクリスチャンではあるが、頑な保守派ではないことを表している。
●女性/移民
カマラ・ハリス(上院議員)は、インドからの移民でサリーを着た母親が科学者であり、かつ公民権活動家でもあったことを強調。移民や女性の尊重を意識してのことだ。ハリスが幼い黒人少女と笑顔で見つめ合うシーンも、子供と女性の未来を意味している。後半は検事、州司法長官、上院議員としての華々しい活躍(皆保険、中間層支援、司法改革、同性婚推進、移民問題など)を紹介。最後は多様な人々を映し、大統領として「すべての人々」に尽くすことを示している。