●ゲイ/新世代
I launched a presidential exploratory committee because it is a season for boldness and it is time to focus on the future. Are you ready to walk away from the politics of the past?
— Pete Buttigieg (@PeteButtigieg) January 23, 2019
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姓の発音が難しく、「ピート市長」の愛称で親しまれているピート・ブーティジェッジ(インディアナ州サウスベンド市長)は、かつては栄えながら今は衰退した工業都市の再建に尽くしている。都市の再生を切々と語るのは、自分には国家運営能力があると示すためだ。37歳と候補者の中で最も若いことを「私たちのジェネレーション」というフレーズで強調。70代のトランプ、バイデン、サンダースとの差別化だ。自宅の居間で夫とくつろぐシーンを挟み、同性婚者であることをさりげなく示している。
大統領は米軍の最高司令官でもあり、軍経験者は大統領としての優位性があるとするために、米軍在籍時の画像も挿入。米軍と兵士の存在はアメリカ人にとって右派・左派を問わず不可侵の聖なるものでもあり、さらに米軍は130万人の兵士を擁しているため、その家族も合わせると重要な票田だ。国政経験の無さをカバーする意味合いもあるだろう。静謐なBGMは、ブーティジェッジの知的で冷静なキャラクターを表している。
●地方/都市
「居住地」も候補者の重要な属性となる。カリフォルニア州選出の下院議員エリック・スウォルウェルは地盤のカリフォルニアではなく、あえて故郷アイオワ州での撮影をおこなっている。雪の積もる郊外の住宅地、警察官だった父親、専業主婦の母親、近所のパブや小さな教会での少人数の集会。まさに古き良きアメリカの風景だ。2人いるコロラド州からの候補者は、共に山脈を背景にメッセージを語っている。前述のブッカー、ハリス、加えてデブラジオ(ニューヨーク市長)といった都市部の政治家たちの都市のリズム感を打ち出した軽快な映像とは対照的だ。
アメリカは国土面積が広大なだけに大都市と地方の行き来は盛んではなく、双方の住人にとって他方の生活環境や文化は時に想像もできないほど隔たっている。かつ何かにつけ都会の洗練性が謳われがちだが、地方こそがアメリカの源流、屋台骨なのだというプライドが地方の居住者にはある。また、大統領選本選は州ごとの選挙人制度であることから、政治家にとって地方や田舎は決して蔑ろにできない地域だ。
●アジア系
史上初のアジア系立候補者であるアンドリュー・ヤンは、政治家の経歴を持たない起業家だ。全米の地方都市での雇用創生を目的に、若者対象の起業家育成プログラムをおこなうNPOを創設・運営している。ヤンの政策は、IT化に伴う大量の失業者を見越し、すべての米国市民に月1,000ドルのベイシック・インカムを供給するというユニークなものだ。ヤンは台湾からの移民を親に持つ二世だが、ビデオでは人種民族に関する描写は一切ない。ヤン自身と家族の姿がアメリカの大統領選では自ずと強烈なエスニック性の発露になっており、それで十分ということなのだろう。(選挙キャンペーンでは「トランプと違って、数学の得意なアジア人」と、アジア系のステレオタイプを逆手に取ったフレーズを使用)